研究課題
本研究は多くの癌種で発現が亢進しており発癌促進に寄与すると考えられているユビキチンE3リガーゼWWP1について、膵発癌に関わる分子機序の解明と、治療的側面からのWWP1阻害の抗腫瘍効果の検討をすることを目的としている。今年度は、WWP1をドキシサイクリン依存的にノックダウン可能なコンストラクトを作成し、膵癌細胞株においてWWP1ノックダウンの表現型の再確認を行った。また、WWP1の抑制によって変動するシグナル伝達経路についてRNAシークエンスを行い、PI3K/AKT経路が抑制されていることが示唆され、乳癌や前立腺癌と同様に、WWP1の標的とされているPTENの機能回復が下流の1AKTの活性化の抑制に寄与している可能性が示唆された。さらにWWP1ノックダウン細胞株を用いたxenograftモデルにおいて、ドキシサイクリンを投与された群では腫瘍の増殖が著明に抑えられることを示した。また、膵特異的にWWP1を強制発現させるマウスモデルについての表現型の検討を進め、変異型KRASを発現させるマウスの交配によって、腺房細胞がmPanINと呼ばれる前癌状態に移行する時期がコントロールと比較して著明に早まっていることが分かった。すでにこのマウスでは30週齢程度で発癌する個体も見られていることから、WWP1は発癌の早期の腫瘍化の段階でその進行を促進する効果を有することが示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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