IgG4関連疾患は、血清IgG4高値に加え、IgG4陽性の形質細胞浸潤による全身臓器の腫大と線維化を同時性・異時性にきたす、我が国で確立された新しい疾患概念である。自己免疫の関与が示唆されてきたが、その原因は不明であり、2014年には我が国の指定難病に指定された。申請者らは、IgG4関連疾患の膵病変である自己免疫性膵炎 autoimmune pancreatitis (AIP)において、その病因自己抗原がラミニン511であることを世界に先駆けて発見した(Sci Transl Med. 2018;10:453)。しかし、ラミニン511自己抗体は自己免疫性膵炎患者の約半数でしか陽性にならず、残りの自己抗体の同定が課題である。 本研究の目的は、ラミニン511以外のAIPの自己抗原を同定することであった。 A.AIPにおける新規自己抗原の同定 2023年度はラミ二ン511に結合するタンパクであるパールカンなど、インテグリンα6β1以外のタンパクに自己抗原が存在しないかを検証した。しかし、インテグリンα6β1以外には自己抗原は同定できなかった。 B.マウスモデルを用いたのAIPの病態解明 「新規自己抗原を用いたモデルマウスの作成と解析」現在、インテグリンα6β1が自己抗原であることが確認できている。同自己抗原候補蛋白質をマウスへ免疫することにより、ヒトAIPの再現の有無について検討した。その結果、インテグリンα6β1を免疫すると膵臓に障害が生じた。数を増やしても検証しえた。今年度は、ラミニン511を免疫したマウスとインテグリンα6β1を免疫したマウスでの相違を検証した。その結果、インテグリンα6β1を免疫したマウスでは、ラミニン511を免疫したマウスと比較し、繊維化やT細胞などの炎症細胞浸潤が少ないが、腺房細胞が小さいといった特徴を有していた。
|