研究課題/領域番号 |
21H02903
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70335355)
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研究分担者 |
巽 智秀 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (20397699)
疋田 隼人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20623044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝癌 / P53 |
研究実績の概要 |
肝細胞の増殖が障害されるような重篤化・慢性化した肝障害時には、成熟肝細胞による肝再生が機能せず、肝前駆細胞依存的な肝再生が生じる。一方で肝前駆細胞は発癌への関与が知られ、肝再生における重大な問題となるが、その分子機序は明らかでない。本検討では肝細胞の癌抑制遺伝子p53に着目し、肝前駆細胞・肝発癌との関連について検討した。 肝細胞株としてHepG2細胞、CL2細胞を用いた。肝発癌モデルとして肝細胞特異的Kras変異モデル(KrasLSL-G12D/+Alb-Cre:KrasG12Dマウス)を用いた。同モデルの肝細胞において、p53の抑制分子であるMdm2を欠損させた肝細胞特異的Mdm2欠損KrasG12Dマウス(Kras LSL-G12D/+ Mdm2fl/fl Alb-Cre)を用いた。 肝細胞株においてMdm2を阻害するとp53が活性化し、アポトーシスの誘導により細胞増殖が障害された。肝細胞特異的Mdm2欠損KrasG12Dマウスにおいても肝細胞のp53が活性化し、アポトーシスおよび細胞老化・senescence-associated secretary phenotype (SASP)が生じて肝障害が惹起され、肝前駆細胞が出現した。また同マウスでは肝発癌が著明に促進し、腫瘍は肝前駆細胞から連続するように形成され、肝前駆細胞マーカーを発現していた。同マウスから作成した肝前駆細胞由来オルガノイドを免疫不全マウスの皮下に移植すると、肝腫瘍と同様に肝前駆細胞マーカーを発現する皮下腫瘍が形成された。 肝細胞のp53活性化は肝前駆細胞の活性化とそれに伴う肝発癌を誘導した。肝細胞におけるp53の活性化が肝前駆細胞依存的な肝再生および肝発癌に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究結果によって、肝細胞におけるp53の活性化が肝前駆細胞依存的な肝再生および肝発癌に関与していることが明らかとなり、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り順調に進行しており、計画書に準じて研究を進めていく。特に次年度以降に、P53の活性化に依存しているのかをP53欠損マウスを用いた解析を行う。また、慢性肝疾患におけるP53の活性化と肝発癌の関係についても検討を進める。
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