研究課題
本研究では肝細胞の癌抑制遺伝子p53に着目し、肝前駆細胞・肝発癌との関連について検討した。これまでの研究で肝細胞のMdm2を欠損させた肝細胞特異的Kras変異モデル(KrasLSL-G12D/+Alb-Cre:KrasG12Dマウス)を用いて、p53の肝細胞の活性化は肝前駆細胞の活性化とそれに伴う肝発癌を誘導することを明らかにしている。この形成された腫瘍を検討したところ、Creは発現しておらず、mdm2遺伝子に欠損はなく、trp53遺伝子にも変異を認めなかった。また、Kras活性化した肝細胞においてのみp53の活性化が肝発がんを誘導するのかを検討するため、肝細胞特異的にMdm2を欠損させたマウスを長期飼育し検討を行った。その結果、肝細胞特異的Mdm2欠損マウスでは、4か月の時点で肝前駆細胞マーカーは上昇し、2年で70%に肝発癌を認め、p53活性化による肝発がんにはKras活性化がなくとも誘導されることが明らかになった。この形成された腫瘍でもmdm2遺伝子に欠損はなく、細胞非自律的な肝発がんが惹起されていること明らかにした。C型慢性肝疾患症例(N=144)の肝生検検体を用いてp53の下流であるp21発現量を検討した。p21発現量の中央値によりp21高発現群(n=72)とp21低発現群(n=72)に分類すると、高発現群では肝生検後の累積発癌率が高値であった。C型慢性肝炎において、p53活性化による肝発がん機序の重要性が示唆された。肝細胞におけるp53の活性化が肝前駆細胞依存的な肝発癌に関与していることが示唆され、慢性肝疾患患者において肝細胞のp53活性制御が発癌予防に重要であると考えられた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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