研究課題/領域番号 |
21H02905
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
緒方 晴彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (30177117)
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研究分担者 |
筋野 智久 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40464862)
細江 直樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90317131)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 |
研究実績の概要 |
上潰瘍性大腸炎をはじめとした炎症性腸疾患は上皮近傍の炎症再生修復がアンバランスとなり修復機構が破綻し炎症が持続することが知られている。免疫を抑制する薬剤が多数開発され使用されているが、既存治療に抵抗性である症例も多数存在する。近年生薬の一つである青黛が潰瘍性大腸炎の改善に効果を認めることが明らかになり、医師主導治験においても有用であることが示された(Naganuma M, et al. Gastroenterology 2018)。これまでに申請者の研究室はマウスモデルを利用し、青黛は多くのAryl hydrocarbon receptor(Ahr)リガンドを有していることが判明しており、マウスモデルにおいて腸炎抑制効果を有している。腸炎抑制作用としてinnate lymphoid cellによる上皮修復作用を有するIL-22の産生上昇のみならず、腸管上皮細胞のAhrシグナルを介した腸管内制御性T細胞(regulatory T cells; Tregs)の増加にあることを見出した。そこで上皮細胞Ahrシグナルを介したTregsの誘導メカニズム、さらにTregsによる組織修復メカニズムの解明を免疫学的、形態学的に実際の人患者に対しても検討することで、既存の治療法とは異なる新たな治療薬の開発を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスシングルセルRNA-seq等を利用し、上皮との関連相互作用について昨年度Cell Repに報告した。
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今後の研究の推進方策 |
Ahr-l食を摂取している潰瘍性大腸炎患者に対し、潰瘍修復過程を超拡大内視鏡で計測する。これまでに申請者の研究室ではUC活動性評価をEndocytoscopeでcomputer aided diagnosis(CAD)システムの開発に着手している。本CADシステムでは潰瘍性大腸炎の重症度を判定することが可能となっている。ヒト潰瘍性大腸炎患者に対しAhr-l食摂食において大腸上皮の組織修復のパターンをCADシステムに入力することで、これまでの組織修復、炎症が寛解期の患者内視鏡像に対して類似点、相違点を検討する。昨年度CADシステムは構築が完了し現在運用に向けて検討中である。 さらに人においてAhr-ligandを内服患者におけるシングルセルRNA-seqを継続的に行い、Treg—腸管上皮の関連性を明らかにする。これまでヒト炎症性腸疾患患者緩解期の粘膜において、マウス検討と同様に腸管上皮直下に有意にTregが増加していることを見出している。ヒトシングルセルデータ、マウス研究で得られた上皮AhrシグナルにおけるTreg 誘導を介した上皮再生メカニズムを理解し、ヒト炎症性腸疾患におけるAhr-l食内服患者でも同様の分子メカニズムで上皮修復を行なっているかをCADより抽出された形態学的な上皮修復と統合する。具体的にはヒト、マウスで得られた条件をオルガノイド等を利用し再現することで上皮構造が再現可能かを検討する。上皮細胞のAhrシグナルを介した組織修復型Helios陽性Treg誘導及び、Tregを介した腸管上皮組織修復促進メカニズムを上皮側、免疫側から詳細に検討することで炎症組織修復の機構を理解する。
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