研究課題
肝機能低下や肝疾患は消化器、脾臓、心臓、肺、腎臓などの臓器機能や病態形成に深く関与する。特に肝疾患で併発する呼吸器障害は、肝肺症候群と呼ばれ、患者QOLを低下させた上で患者生命そのものを脅かす。慢性的な肝機能の低下により蓄積した血管拡張物質が肝肺症候群の原因とされてきたが、現在までに詳細な病態形成機序は示されていない。本研究では、これまで詳細でなかった肝臓内神経線維の維持・活性化機構を解明し、肝臓内神経線維変性を起因とした肝疾患合併症(肝肺症候群や肝腎症候群など)の発症増悪機序の解明を目指す。肝臓内を走行する求心性神経の由来を探索するため、逆行性トレーサーをマウス肝臓内に打ち込んだ。逆行性蛍光トレーサーを投与3日目にマウスを屠殺して、迷走神経節および後根神経節を回収した。これら神経節を薄切して顕微鏡観察を実施したところ、左迷走神経節及びTh4レベルの後根神経節内神経細胞において陽性細胞を検出した。一方で、肝臓線維化モデルマウスの肝臓内に逆行性トレーサーを投与したところ、コントロールマウスで検出された蛍光シグナルが消失していた。これらの結果は、肝臓線維化病態の進展に伴い、肝臓から脳へとシグナルを伝える求心性神経の脱落を示唆している。肝臓線維化に伴う、求心性神経の脱落機序を解明するため、求心性迷走神経細胞と肝星細胞の共培養を行った。コントロールマウス由来の肝星細胞と比較して、肝臓線維化モデルマウス由来の肝星細胞は、神経細胞のアポトーシスを誘導した。肝星細胞は活性化に伴い、求心性神経を変性させることが示唆された。当該年度の解析により、肝臓線維化病態の進展に伴う、肝星細胞の活性化が、肝脳相関を撹乱を引き起こすことが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、in vivo及びin vitro解析を実施して、肝臓線維化病態による肝脳相関破綻機序の一部を解明できた。これらの結果を得られたことにより、本事業の目標を概ね達成していると考えられた。
肝肺症候群における肝脳相関の役割を明確にするため、迷走神経切除マウス及び肝臓線維化モデルマウスを用いて喘息病態を作製する。これらモデル動物の喘息病態は、病理組織標本・血清学的解析・肺および肝臓内免疫細胞のプロファイリングを実施して評価する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件)
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