研究課題
肝臓は代謝および解毒を司る臓器であるため、肝機能低下や肝疾患は消化器、脾臓、心臓、肺、腎臓などの臓器機能や病態形成に深く関与する。特に肝疾患で併発する呼吸器障害は、肝肺症候群と呼ばれ、患者QOLを低下させた上で患者生命そのものを脅かす。慢性的な肝機能の低下により蓄積した血管拡張物質が肝肺症候群の原因とされてきたが、現在までに詳細な病態形成機序は示されていない。近年、申請者らは、腸管環境が肝臓して脳に伝達され末梢組織の恒常性に関わる”腸-肝臓-脳自律神経反射”を世界に先駆けて発見した(Teratani et al., Nature, 2020)。当教室での更なる解析により、この自律神経反射の乱れが肺の免疫異常に繋がることをマウスモデルで発見した。この発見に基づき、我々はこれまで謎の多かった肝肺相関の解明に取り組むことを本研究課題とした。本研究を通じて、これまで詳細でなかった肝臓内神経線維の維持・活性化機構を解明し、肝臓内神経線維変性を起因とした肝疾患合併症(肝肺症候群や肝腎症候群など)の発症増悪機序の解明を目指す。本研究課題において、以下のことを明らかにした。1) 肝臓線維化病態進展に伴い、求心性迷走神経の一部が脱落した、2) 肝臓星細胞は活性化に伴い、神経栄養因子であるGDNFの発現を低下させた、3) 迷走神経肝臓枝の切除は、肺の2型自然リンパ球蓄積を有意に増加させた。これらの結果は、肝臓は求心性迷走神経を通じて肺の恒常性維持に関わっており、肝星細胞は肝臓-脳-肺軸の維持に非常に重要な役割を担っていることを示している。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
JHEP Rep.
巻: 5 ページ: 100757
10.1016/j.jhepr.2023.100757.
iScience
巻: 26 ページ: 106220
10.1016/j.isci.2023.106220.