研究課題/領域番号 |
21H02907
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
稲垣 豊 東海大学, 医学部, 教授 (80193548)
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研究分担者 |
柳川 享世 東海大学, 医学部, 助教 (10760291)
住吉 秀明 東海大学, 医学部, 講師 (60343357)
紙谷 聡英 東海大学, 医学部, 准教授 (30321904)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝線維症 / 肝星細胞 / 脱活性化 |
研究実績の概要 |
肝星細胞は、肝細胞壊死や炎症などの線維化刺激により活性化してコラーゲンを過剰産生するが、線維化刺激がなくなるとその約半数が脱活性化して静止期状態に戻る。しかしながら、星細胞の脱活性化自体が肝線維化改善に繋がるかは不明であった。我々は、活性型星細胞の脱活性化因子として新たにTcf21を見出し、その発現が低下した線維肝組織中の活性型星細胞にTcf21発現を誘導することで、肝線維化の改善と線維肝組織の修復がもたらされることを見いだした。 そこで本研究課題では、Tcf21の発現誘導により脱活性化した星細胞の肝組織内局在や形質の変化、同細胞における液性因子や接着分子の発現変動を明らかにすることで、難治性の肝線維症に対する新たな治療法の開発に向けた分子細胞基盤を確立する。 これまでに、脱活性化した星細胞を追跡する新たなツールとして、内因性Ⅰ型コラーゲンα2鎖遺伝子プロモーターの制御下にタモキシフェン依存的にCre組換え酵素を発現するCol1a2-CreER マウスを樹立した。このマウスを用いて、脱活性化した星細胞をmTFP1蛍光で永続的に標識することに成功し、FACSを用いてmTFP1陽性細胞を選択的に採取することが可能になった。 また、Tcf21/EGFP発現AAV6もしくは対照としてEGFP発現AAV6を感染させた培養活性型星細胞からRNAを抽出し、Tcf21発現誘導の有無による遺伝子発現プロフィールの変化をマイクロアレイにより網羅的に解析した。その結果、Tcf21の発現誘導により活性化される下流の分子群ならびにシグナル経路を同定し、Tcf21による活性型星細胞に対する脱活性化機序を解明する手がかりを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の解析に用いた、Col1a2-CreERマウスとStop-GFP floxマウスを交配して得られたColCreER/GFPマウスにおいては、活性型星細胞のGFP蛍光は微弱で、FACSによるGFP陽性細胞の採取は困難であった。このため、新たにStop-mTFP1 floxマウスを導入することでColCreER/mTFP1マウスを作出した。これにより、mTFP1蛍光により活性型星細胞を選択的かつ充分な蛍光強度として検出可能となり、予定していた実験が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる令和5年度には、以下の実験を予定する。 1)新たに作出したColCreER/mTFP1マウスに対して、四塩化炭素の反復投与により肝線維症を誘導し、タモキシフェン投与により任意のタイミングでコラーゲン産生細胞をmTFP1で蛍光標識する。その後に四塩化炭素の投与を中止して、脱活性化した星細胞の肝組織内での局在の変化や他の細胞とのクロストークを、組織学的に解析する。 2) 上記のmTFP1で標識された脱活性化星細胞を、コラゲナーゼ・プロナーゼ灌流法により消化した肝組織から、FACSを用いて分離を行う。分離された脱活性化星細胞からRNAを抽出し、その発現形質を静止期星細胞ならびに活性型星細胞と比較するとともに、周囲の細胞とのクロストークを担う分子をin vivoでも明らかにする。
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