研究課題/領域番号 |
21H02911
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究分担者 |
坂東 泰子 (暮石泰子) 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60452190)
柴田 玲 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (70343689)
清水 優樹 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90801887)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 心不全 / 毛細血管障害 / アディポカイン / クローン性造血 / 血球系幹細胞 / サイトカインストーム / 組織虚血 |
研究実績の概要 |
糖尿病合併心血管病は,大血管障害と細小血管障害に分けられる。循環器領域の糖尿病性細小血管障害には網膜症などに加えて,最近心不全や虚血後の血管新生障害なども含まれる事が分かってきた。本研究では糖尿病に伴う代謝異常と,糖尿病性細小血管傷害による心機能の低下に対して、特にインクレチンやグルカゴンと毛細血管機能、血管新生機能に着目して研究と新規治療法の開発を目指している。 (1)グルカゴン研究:グルカゴン関連ペプチドは、心筋や血管内皮細胞にも受容体が存在しており直接的効果がある。グルカゴン関連ペプチドにより血管新生を惹起できることが報告されており、グルカゴン関連ペプチドと糖尿病性毛細血管障害の関連性が注目されている。我々はグルカゴン・GLP-1両欠損マウスを入手し研究を継続しており、その結果興味ある知見を得たので現在論文投稿中である。(2)アディポカイン・マイオカイン研究:我々は新規アディポカイン・マイオカインを複数同定しており、これらが虚血部血管新生作用や抗心不全作用を有していることも報告した。その中で、アディポリンを同定しその生物学的特性に関して論文発表を行った(Takikawa T. et al. PLoS One. 2020;15:e0243483.)。心筋虚血マウスにおいて、アディポリンは心筋保護作用を示した。(3)糖尿病とクローン性造血と心不全について。:現在深刻な人員不足と準備に時間を要しており, 2022年度からは着手する予定である。(4)その他の関連成果:虚血組織においてリンパ管再生が血管新生時に重要であることを見出し、論文発表した(Pu Z, et al. ATVB. 2021;41:2006-18)。また体内リズム異常を動物に与えると、虚血組織の血管新生が低下することを示した(Tsuzuki K, et al. JAHA. 2021;10:e020896.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)グルカゴン、GLP-1 研究:グルカゴン関連ペプチドに関する研究は、上記の概要のように、概ね順調に進行していると判断している。 (2)アディポカイン・マイオカイン研究: 新規のアディポカイン・マイオカインによる心血管保護効果に関する研究は、上記の概要のように、概ね順調に進行していると判断している。 (3)糖尿病とクローン性造血と心不全について。:現在深刻な人員(研究者)不足と準備に時間を要しており, 2022年度からはようやく着手できる予定である。このため、本申請研究は、「やや遅れていると」判断した。 (4)その他の関連する成果: 関連する脈管新生研究として、上記記載のような、虚血組織においてリンパ管再生が血管新生時に重要であることなどを見出し、論文として公表することができた。また、体内時計のリズム異常を動物に与えると、虚血組織の血管新生反応が低下することなどを示した。 よって、我々のグループのテーマである血管再生研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きグルカゴン関連ペプチド欠損マウスを用い、心筋虚血モデル、TAC 心不全モデル、血管新生モデルなどを用いて、グルカゴンや GLP-1受容体作動薬剤の心血管系に与える役割を検討して行く。この中で、細胞内シグナル伝達経路の検討も加えていく予定である。また引き続き、新規のアディポカイン、マイオカインについても、動脈硬化モデル、血管新生モデル、心不全モデルなどを用いて、それらの効果を検討して行きたい。 血管新生抑制因子の研究に関しては、肺高血圧症、心筋梗塞などにおける動態も検討して行きたい。 なお、内科専門医制度の、認定要件の変化などに伴って、現在内科希望者が減少していることと、臨床医学系大学院(博士課程)での「臨床応用を視野に入れた基礎研究の実行」を希望している若手医師が激減しており、このままでは日本のトランスレーショナル医学研究が早晩行き詰まりそうな感覚を、日夜覚えている。
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