研究課題/領域番号 |
21H02914
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高島 成二 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (90379272)
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研究分担者 |
加藤 久和 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30589312)
松岡 研 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90826190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ATP / ミトコンドリア / 心不全 / 微小血管障害 / 生活習慣病 / 心臓拡張機能 |
研究実績の概要 |
本事業は、心不全の新たな治療法の開発を目的として開始されている。心不全は高齢化社会の進展とともにわが国でも患者数が増加している。生活習慣病である糖尿病や高血圧は心不全の大きな原因の一つである。これらの生活習慣病は心臓に栄養や酸素を供給する血管に障害をきたすことにより心臓への血液循環不全をきたす。結果、酸素不足に陥った心筋細胞では心臓全体を収縮弛緩させるために必要なATPと呼ばれる小分子の産生量が低下し心臓のポンプとしての機能が低下する。 我々のグループは、G0s2と呼ばれる低酸素によって誘導される小さなタンパク質に注目した。G0s2はミトコンドリアに存在する物質で、その量をあげることによりミトコンドリアでのATP産生速度が増加することを我々は明らかにしてきた。そこで心不全に陥った心臓においてG0s2の量を上げる薬物を投与すれば心筋内のATP量を増加させ心機能を回復させることができると考えた。 本事業では、これまでG0s2のタンパク質の分解阻害化合物の同定に成功し、更に活性の上がった化合物の合成に成功した。これを心筋細胞に投与するとミトコンドリア内のATP消費速度が低下し、同時に細胞が低酸素に対して耐性を示した。一方で、細胞質のATP濃度はほとんど変化がなかったことから、ミトコンドリア内ATPは定常状態では常にATP分解酵素により分解されていることが示された。すなわち、G0s2はF0F1ATP合成酵素の機能的相互作用を増強することによりミトコンドリア内におけるATP消費を抑制している可能性が示された。最終年度はこの薬剤を使用して、ミトコンドリアATPの分解機構の解明を進めるとともに、G0s2分解阻害剤の心不全治療薬としての概念の証明をすすめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度にG0s2分解阻害剤のスクリーニング系を立ち上げ、5万4000の化合物の中からヒット化合物を見出し、類似化合物検索とそれに続く合成展開によりADMET指標が比較的良好な化合物系統を見出した。2022年度は、本化合物系統の合成展開を更にすすめ、より薬効の強い化合物の同定に至った。このリード候補化合物を心筋細胞に投与することにより、ミトコンドリアATP濃度の低下が有意に抑制され、さらに細胞が低酸素耐性を示すことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のG0s2分解阻害剤のリード候補化合物の合成展開を更にすすめ最適化をはかり、物質特許の出願を行う。同時に、本薬剤を使用してミトコンドリアATPの分解機構とATP産生効率の関係を生体内・生体外で解析する。さらに複数の心不全モデル動物を使用してG0s2分解阻害剤の心不全治療薬としての概念の証明を進める。
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