研究課題/領域番号 |
21H02915
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂田 泰史 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00397671)
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研究分担者 |
肥後 修一朗 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授(常勤) (00604034)
大谷 朋仁 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30623897)
朝野 仁裕 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授(常勤) (60527670)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ディープフェノタイピング / 疾患iPS細胞 / 心筋症 |
研究実績の概要 |
ヘテロ接合型トロポニンTΔ160E変異が同定された拡張相肥大型心筋症症例よりiPS細胞を樹立し、ゲノム編集を用いてΔ160E変異を正常に修復、あるいはホモ接合型にΔ160E変異を導入したiPS細胞を作成し、分化心筋を用いた機能解析を行った。トロポニンTΔ160E変異はサルコメア局所でのカルシウム濃度の減衰時間を延長させ、拡張速度を低下、弛緩時間を延長させた。Δ160E変異は異常電位を惹起し、活動電位持続時間を延長させ、NFATc1の核内移行、心筋肥大、CaMKIIδ・ホスホランバンリン酸化の亢進を来した。エピガロカテキンガレートをΔ160E心筋に投与したところ、カルシウム濃度減衰時間を短縮させ、拡張機能を改善させることを見出し、以上の知見を論文報告した。 ハイコンテントイメージングを用いることにより、数千個のマウス培養心筋細胞において、カルシウム動態と免疫染色画像をリンクさせ取得する解析アルゴリズムを構築した。拡張型心筋症症例において同定されたPKD1遺伝子フレームシフト変異について、本手法を用いて解析し、Polycystin-1が低下した心室筋細胞においてカルシウム電位が低下することを見出し、論文報告した。 補助人工心臓が必要な重症心不全に至ったベッカー型筋ジストロフィー女性キャリア症例を対象に、心筋組織病理標本を用いた解析、遺伝解析、iPS細胞から分化させた心筋細胞を用いた機能解析を行った。解析の結果、ジストロフィン遺伝子変異に加え、コラーゲンの生合成に関わるPLOD3の遺伝子バリアントが存在することで、心臓組織の収縮力に加えスティフネス(硬さ)を低下させ、重症化に関与していることを見出し、論文報告した。 循環のサポートが必要な重症心不全に移行し、MYH7バリアントが同定された肥大型心筋症症例を見出し、その詳細な臨床経過を論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究開発の対象とした3つの希少難治性心筋症について研究開発を推進した。iPS細胞由来分化心筋細胞を用いた機能解析の予備検討として、ハイコンテントイメージングを活用し、複数の心筋細胞を対象としたカルシウム解析系を構築し論文報告した。トロポニンT心筋症について、アイソジェニック細胞を用いた機能解析を行い論文報告した。重症心不全を来した筋ジストロフィー症例を見出し、アイソジェニック細胞を用いた機能解析を行い論文報告した。新たに、MYH7バリアントが同定された肥大型心筋症症例を見出し、論文報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究開発が対象とする3つの希少難治性心筋症について、当初研究計画に則り、アイソジェニックiPS細胞の構築、及びこれらを用いた機能解析を推進する。2023年度の研究目標である、iPS細胞由来分化心筋細胞を用いた薬剤による治療介入評価、及び得られたデータの臨床へのフィードバックを推進する。
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