研究課題/領域番号 |
21H02922
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中島 裕史 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00322024)
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研究分担者 |
田中 繁 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30822051)
岩田 有史 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (90436353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / 気道リモデリング / スーパーエンハンサー |
研究実績の概要 |
気管支喘息の長期罹患例では、気道リモデリングにより肺機能が低下する。気道リモデリングの病態にはTh2細胞が産生するIL-13や、多くの細胞が産生するTGF-bの関与が示されているが未だ不明な点が多い。気道リモデリングの修復機転に関する知見はさらに少なく、「気道リモデリングは非可逆的である」と一般に信じられているが、その科学的根拠は乏しい。近年、皮膚では上皮幹細胞が過去の炎症を記憶し、反応性を亢進させることが示されたが気道リモデリングにおける上皮細胞炎症記憶の関与は不明である。本研究では、気道炎症における上皮細胞記憶と樹状細胞の関連を包括的に解析することを目的とした。 2022年度は、チリダニ(HDM)喘息モデルにおいて誘導される上皮細胞と樹状細胞の相互作用について、各細胞のRNAシークエンス解析とH3K27ac ChIPシークエンス解析を経時的に行い、トランスクリプトーム変化とエピゲノム変化を同定した。さらにスーパーエンハンサー関連遺伝子の探索、gene ontology解析、サイトカイン/ケモカインのネットワーク解析により形質の変化と相互作用を解析した。その結果、HDM喘息により誘導されるスーパーエンハンサーとスーパーエンハンサー関連遺伝子を多数同定した。同定したスーパーエンハンサー領域に対応するヒトゲノム領域には喘息関連SNPsが多数集積したことより、ヒト喘息においても重要な領域/遺伝子が同定できたと推測される。 さらに経時的な解析により、1)単球由来樹状細胞においてトランスクリプトーム変化が他の細胞に先駆けて誘導されること、2) 単球由来樹状細胞は気道炎症の早期相(day7-9)では炎症誘導に関連する表現型を示すが、後期相では免疫反応の抑制とホメオスタシスの維持、創傷治癒に関連する表現型を示すことが明らかとなった。2023年度は、これらの分子メカニズムを解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要に示すとおり、既に興味深い結果が得られている一部の計画は、予定より進捗しているが、そこに研究の重点を置いたため、別の研究計画には一部遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次世代シークエンス解析の結果に基づき、喘息モデルマウスをもちいて複数の機能分子候補の機能を明らかにすることを目指す。それとともに、アレルゲン刺激時の気道上皮細胞と樹状細胞のシグナル伝達分子活性化と転写因子発現の包括的解析を行う。
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