研究課題/領域番号 |
21H02930
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
藤田 雄 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10737133)
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研究分担者 |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90468679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | COPD / 2型肺胞上皮 |
研究実績の概要 |
II型肺胞上皮細胞(AT2)は、組織幹細胞であり、その機能的異常が慢性閉塞性肺疾患(COPD)や特発性肺線維症(IPF)で報告されているが、機能的多様性の詳細を含め病態における実際の役割は明らかでない。そこで我々はsingle-cell transcriptomic analysisを用いてCOPD肺を解析し、AT2形質の不均一性を検討した。その結果、AT2には自己複製しながらI型肺胞上皮細胞(AT1)に分化するという従来想定されてきたlineageとは別に、炎症性分子を高発現するAT2集団へ分化形質転換するtrajectoryが存在することをCOPD病態において見出した。これは炎症制御に関与する新規のAT2集団の同定となり、我々はinflammatory AT2 (iAT2)と命名した。本研究では、新規iAT2のCOPD病態進展における役割と機能的解析を目的として解析を行なった。我々は、ヒト肺組織からマトリゲル内での肺オルガノイド作成の実験系をすでに確立している。iAT2は、COPD肺組織においてPD-L1陽性を指標とすると約1%程度の集団であることが確認された。末梢肺からcollagenese処理後細胞を単離し、FACSにてEpCAM+/HTII-280+(AT2特異的マーカー)の細胞集団からiAT2の細胞集団をソートし、オルガノイド培養に用いて検討を行なっている。AT2の形質維持や分化細胞のtrajectoryを評価するために、肺オルガノイドのsingle-cell transcriptomic analysisを行い、iAT2オルガノイド培養における多分化能の評価を行う。iAT2由来肺オルガノイドが培養中で分泌する炎症性サイトカイン/ケモカインを測定し、阻害薬などにより炎症性フェノタイプを制御できるかの検討を合わせて行い、iAT2の病態における関与機序を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々は、ヒト肺組織からマトリゲル内での肺オルガノイド作成の実験系をすでに確立し、予定通りよりも早くオルガノイド培養に用いたAT2の形質維持や分化細胞のtrajectoryの評価や肺オルガノイドのsingle-cell transcriptomic analysisを行い、iAT2オルガノイド培養における多分化能の評価している。これまでの結果からCOPDの肺検体scRNAの結果から得られたデータは、in vitroにおいても同様のphenotypeが確認されている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、iAT2由来肺オルガノイドが培養中で分泌する炎症性サイトカイン/ケモカインを測定し、それらの阻害薬などにより炎症性フェノタイプを制御できるかの検討を合わせて行い、iAT2の病態における関与機序を明らかにする。それらの結果が得られれば、iAT2を標的とした新しいCOPD治療につながる可能性がある。
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