研究課題/領域番号 |
21H02952
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
指田 吾郎 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別招聘教授 (70349447)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | HMGA2 / 造血幹細胞 / ストレス / クロマチン / 炎症応答 / HMGA1 / TNFa / IGF2BP2 |
研究実績の概要 |
組織幹細胞は、個体発生や成体組織恒常性を維持する不可欠な細胞である。造血幹細胞は自己複製能と多分化能を持ち、ストレスによって生じる造血障害を修復する。しかし、個体がストレスを受けた後、造血幹細胞がどのように制御され、その自己複製と分化を決定するのか明白ではなかった。この疑問に答えるために、胎児幹細胞で高発現しておりクロマチン制御因子であるHMGA2 (High-mobility group AT-hook 2)に着目した。HMGA2は、胎児造血幹細胞では、Lin28-Let7 miRNA-Hmga2経路により発現が高く維持されている。一方、成体造血幹細胞では、Hmga2は発現しているが、その発現レべルはLin28低発現とポリリコーム抑制性複合体(PRC2)によって抑制される。こうしたHmga2の発現制御機構は研究されてきたが、その下流の標的因子を含めたクロマチンと転写ネットワークは明らかでなかった。本研究では、定常状態・ストレス状態における幹細胞の自己複製と分化、幹細胞の対称と非対称性分裂、造血組織の維持と再生の分子基盤を、HMGA2から理解する「ストレス造血における幹細胞エピゲノム制御と運命決定機構の解明」を目的とした。始めに、Hmga2コンディショナルノックアウトマウスと胎児幹細胞レべルのHmga2高発現を誘導できるRosa26コンディショナルノックインマウスを作製した。これら改変マウスを用いて、スト レス後の造血回復を解析した。Hmga2発現幹細胞の自己複製亢進と速やかな造血回復を認めた。従来報告されていたHmga2によるクロマチン伸展に限らない、状況依存的なHmga2による幹細胞のクロマチン制御機序を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、Hmga2ノックインマウスとHmga2ノックインマウスを用いて、5FU投与モデルによる造血ストレス負荷後のすみやかな造血回復ないし造血の遅延を確認した。Hmga2発現幹細胞では、自己複製亢進と速やかな造血の回復を認めたが、これは炎症応答遺伝子の発現をHmga2が抑制しているためであることがわかった。これは、従来報告されていたHmga2によるクロマチン伸展に限らない、転写抑制機能を示していた。このように、定常状態ではなく、ストレス状況下でのHmga2による幹細胞のクロマチンと細胞機能の制御の仕組みを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、こうして同定したストレスに依存したHmga2機能の制御機構を解析する。Hmga2の結合領域/標的遺伝子の造血制御における役割をCRISPR/Cas9/dCas9法を 用いて、遺伝学的に検証する。また、状況依存的なHmga2機能を制御する分子メカニズムの解析を、質量解析やRNA免疫沈降法によって、解析する。幹細胞を制御する方法の開発を進める予定である。
|