研究課題/領域番号 |
21H02955
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 拓水 東京医科大学, 医学部, 准教授 (30533179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サリドマイド / IMiDs / CRBN / セレブロン / ユビキチン / ポマリドミド |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に基づきCRBNに結合する因子群を単離し、全てCRAPomeにより特異性などを分析した。結果としていくつかの特異的結合因子候補が見いだされた。これらを、抗体を用いた生化学実験によって改めて結合を確認し、IMiDsでCRBNから解離することを見出した。これらの因子はこれまでにCRBNとの機能的関係性が見いだされていないものでCRBNの元の機能やIMiDs治療機構を解明していく上で大変興味深い。 次に、レナリドミドおよびポマリドミド誘導体をアミド結合により磁性ナノ微粒子に共有結合で接続させて、骨髄腫細胞からCRBNを精製して翻訳後修飾の解析を行ったが、本年度では新たな修飾は検出されず、ユビキチン化のみが判明したにとどまった。よって次年度も引き続き分析を続ける必要がある。また新規CRBN結合因子X1についての生化学的な実験を行い、CRBNのX1における結合領域を検出することに成功した。ただし、従来のCRBNの結合するネオ基質はCxxCGなどのコンセンサス配列が判明しているが、このX1についてはそこまで分かっておらず、次年度において解析が必要であるという結論に達した。次に骨髄腫細胞においてゲノム編集を用いたCRBN KO細胞などの作成を試みたが、骨髄腫細胞は浮遊であるため作成はかなり困難であり、OPM2株におけるCRBN KOのみに樹立はとどまった。そこで自然ではRNAiでの遺伝子抑制を試みることにする。最後にCRISPR-screeningを実施し、いくつかIMiD作用に関係しそうな因子群について解析を行ったが、本年度では明確な結果が出なかったことから次年度に持ち越すことにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たなCRBN結合因子を見出すことに成功しているので、本年度の研究は大いに進展したと考えている。これまでの申請者や国内外の研究により薬剤結合により新たにCRBNに結合してくる因子群については報告が多数出されている現状があるが、CRBNから薬剤によって解離する因子についての研究はまだ大変乏しい状況にあり、これら因子群の役割解明はIMiD治療機構の解明において大いに重要な鍵となるものと考えている。ただ本年度ではCRBNの翻訳後修飾についての解明はそこまですすまなかった。ユビキチン化は検出出来ていたが、ユビキチン化そのものは以前の研究で自己ユビキチン化されることが判明しているのでその点においては既知であり、未知の修飾は見出されなかった。ユビキチン化以外に修飾されないかもしくは機能に関係する修飾はない可能性もあるが、次年度も引き続き解析を行いたいと考えている。またX1については、CRBN結合ドメインは判明してきたが、明確な構造デグロン(コンセンサス配列)はまだ見つかっていない。過去のCRBNネオ基質におけるコンセンサス配列とは異なりそうだということのみ分かっている。こちらも次年度においても解析を続けたいと考えている。骨髄腫におけるゲノム編集によるKOは難しいことが判明した。またまだ検証が終わっていないが骨髄腫においてCRBN結合因子は生存において必須で可能性もある。そこでRNAiを次年度は使用することにする。CRISPR-screeningによるIMiDs作用関係因子については本年度では新たな因子などは見いだせなかったために次年度においても継続することにする。以上まとめると、CRBN結合因子やX1解析においては成果が出され、他の修飾やCRIPSR-screeningについては本年度では終えられなかったが、様々な知見が得られたことからトータルでは順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に発見されたCRBN結合因子群についての生化学的解析を進めることを考える。またCRISPR/Cas9によるノックアウトは骨髄腫細胞では困難であったことから、RNAiによる手法でのノックダウン解析を行う。方法としてRNAiでノックダウンした株においけるIMiDsの効果やネオ基質群の分解について調べる。また骨髄腫自体の増殖などについての解析も計画する。結果にも書いたように、CRBNの修飾は、本年度は見つからず、もしかしたら特異的な修飾は存在していない可能性もあるが、次年度も引き続き解析を行うことを計画する。またX1については順調に解析が進んでいるので、コンセンサス配列の決定や、X1のIMiD効果における意義についてRNAiなどを用いて検証する。CRISPR-screeningについても本年度は新規の因子が見出されていないことから、次年度も引き続き実施していく。
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