研究課題/領域番号 |
21H02960
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤尾 圭志 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (70401114)
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研究分担者 |
岡村 僚久 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10528996)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / 遺伝素因 / B細胞 / オートファジー |
研究実績の概要 |
研究代表者らはSLEを含むノムシークエンスからなる機能ゲノムデータベースImmuNexUTを構築した。その中で、SLEの遺伝的リスクがメモリーB細胞のオープンクロマチン領域に集積していること、メモリーB細胞の代謝経路遺伝子発現がSLEの臓器障害指標であるSDIと関連することを見出した。さらに興味深いことに加齢と関係するB細胞のモジュール内に、LRRC25とLYSTが含まれており、SLE疾患感受性多型の標的遺伝子であることを見出した。本研究ではLRRC25, LYSTに着目して、全身性エリテマトーデスの遺伝的リスクと関連する病原性B細胞であるABCsの分化機構を解明することを目的とする。これはヒト自己免疫疾患の患者の大規模機能ゲノムデータベースから得られた知見を基に、SLEの新規感受性遺伝子と新規感受性経路を解明する、極めて独創性の高い研究といえる。 SLEの新規感受性遺伝子LRRC25は発現が血球系細胞に限られているが、上記の様にIFNシグナル抑制能とオートファジー促進能を持ち、全身性自己免疫疾患を促進する作用と抑制する作用の双方が想定される。マウス全体でのLRRC25欠損マウスの解析により、LRRC25欠損B細胞でBach2,Bcl6, IRF4の発現亢進、血清総IgGの上昇、NP-LPS免疫時の抗NP抗体産生が亢進することを見出した、これはLRRC25が液性免疫応答を抑制することを示唆している。本年度はLRRC25欠損マウス及びB細胞特異的LRRC25欠損マウスに能動免疫及びイミキモド投与によるSLEモデル誘導を行い、LRRC25の液性免疫応答における作用を評価する。特にABCs分化におけるLRRC25の作用を重点的に解析する。LRRC25欠損マウスではオートファジー遺伝子の発現亢進も見られており、LC3-GFPマウスを掛け合わせオートファジーへの影響を詳細に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SLEの新規感受性遺伝子LRRC25は発現が血球系細胞に限られているが、上記の様にIFNシグナル抑制能とオートファジー促進能を持ち、全身性自己免疫疾患を促進する作用と抑制する作用の双方が想定される。マウス全体でのLRRC25欠損マウスの解析により、LRRC25欠損B細胞でBach2,Bcl6, IRF4の発現亢進、血清総IgGの上昇、NP-LPS免疫時の抗NP抗体産生が亢進することを見出した、これはLRRC25が液性免疫応答を抑制することを示唆している。 また、ImmuNexUTのSLEデータについて細胞代謝経路に注目した解析を行った。具体的には疾患活動性が低下しているSLEで発現亢進している遺伝子(Disease state gene)と疾患活動性が上昇しているSLEで発現亢進している遺伝子(Disease activity gene)を同定した。すると細胞代謝経路はB細胞のDisease state geneに属することが明らかとなった。このことは臨床的に低疾患活動性に見えるSLE患者において、LRRC25を含む細胞代謝経路が亢進していることを示唆している。現在の治療ではこの経路が十分抑制できず、臓器障害が惹起されてしまうことが想定された。これはSLEの予後を考える上で重要な知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はLRRC25欠損マウス及びB細胞特異的LRRC25欠損マウスに能動免疫及びイミキモド投与によるSLEモデル誘導を行い、LRRC25の液性免疫応答における作用を評価する。特にABCs分化におけるLRRC25の作用を重点的に解析する。具体的には自己抗体産生、ABCを中心とするリンパ球分画の分化、腎炎の発症などを評価する。LRRC25欠損マウスではオートファジー遺伝子の発現亢進も見られており、LC3-GFPマウスを掛け合わせオートファジーへの影響を詳細に検討する。 またImmuNexUTにおいて遺伝子発現量予測モデルを構築し、B細胞の代謝経路の遺伝的リスクとの関連を評価する。さらに各種免疫抑制剤投与症例における細胞代謝の状態を評価し、治療反応性や予後との関連を解明する。
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