研究課題
①『iPS由来呼吸器細胞を用いた急性呼吸器感染症の革新的な研究基盤の確立』ALI培養の気道上皮細胞及び肺胞上皮細胞、3D培養での肺オルガノイドにおいて、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)や季節性インフルエンザウイルス(FluV)の感染モデルを構築し、肺オルガノイドの急性呼吸器ウイルス感染症の研究ツールとしての有用性を明らかにした。気道上皮細胞及び肺胞上皮細胞におけるSARS-CoV-2やFluV感染のための侵入方向、及び子孫ウイルスの排出方向を特定した。また、Remdesivirを用いた、それら細胞でのウイルス抑制効果も実証した。SARS-CoV-2感染気道上皮細胞及び肺胞上皮細胞での遺伝子発現解析を行った。SARS-CoV-2感染モデルが構築できたため、複数の化合物を用いたウイルス抑制試験(薬剤評価試験)を行った。実施した化合物のうち、Remdesivirで特異的なウイルス抑制が認められ、その有効濃度も株化細胞等で既に報告のある値とほぼ同等であった。②『宿主因子は何か? その阻害剤は有効か? 阻害剤耐性ウイルスは出現するのか?』iPS細胞へのゲノム編集を行いACE2遺伝子欠損iPS細胞及びTMPRSS2遺伝子欠損iPS細胞を作出した。ACE2遺伝子欠損細胞から気道上皮細胞あるいは肺胞上皮細胞に分化・誘導した細胞を用いて、SARS-CoV-2やFluV感染実験を行った。ACE2遺伝子欠損細胞において、FluV感染後、野生型細胞と同様に効率的なウイルス増殖をしたが、SARS-CoV-2感染後は、野生型細胞のような効率的なウイルス増殖は認められなかったことから、ACE2が主な受容体であることを実証できた。また、SARS-CoV-2感染ACE2遺伝子欠損細胞からACE2非依存的な細胞侵入についても、確認することができた。SARS-CoV-2のACE2以外の受容体候補として、CD26に付いて解析を行った。CD26抗体を用いたウイルス抑制実験では、実施した条件では特異的なウイルス抑制は認められなかったことから、宿主因子ではなかったと考えられた。
3: やや遅れている
SARS2-CoV-2の緊急事態宣言に伴い、国立感染症研究所や共同研究先での研究等について、制限されたため。
(1)TMPRSS2遺伝子改変iPS細胞から分化・誘導した気道上皮細胞を用いたSARS-CoV-2やFluV等の宿主因子解析(2)他の呼吸器感染症を引き起こすウイルスを用いた感染モデルの構築(3)これまで、白人由来iPS細胞から分化・誘導した気道上皮細胞あるいは肺胞上皮細胞を用いていたが、日本人由来のiPS細胞から分化・誘導した気道上皮細胞あるいは肺胞上皮細胞を用いて、細胞間の比較解析
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cell Reports
巻: 34(2) ページ: 108628
10.1016/j.celrep.2020.108628.