研究課題
褐色脂肪細胞は、ミトコンドリアの電子伝達系の活性化によって生じたプロトン密度勾配のエネルギーを、Uncouplingprotein1(UCP1)によって脱共役することで熱産生を行う。褐色脂肪細胞の長期的な熱産生亢進には、転写・翻訳を介したUCP1の発現増加が重要であることが知られている。一方、褐色脂肪細胞の熱産生は、交感神経刺激によって分単位で即時的に亢進するが、その際にUCP1が活性化するメカニズムは明らかになっていない。本研究では、世界に先駆けて褐色脂肪細胞のMAM(Mitochondria-associatedmembrane:小胞体とミトコンドリアが接触する領域であり、ミトコンドリアの電子伝達系を活性化する小胞体からのカルシウム流入を制御する)に着目し、交感神経刺激による褐色脂肪細胞の即時的な熱産生亢進の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。これにより、これまで長年に亘って不明であった交感神経刺激による褐色脂肪細胞の即時的な熱産生制御のメカニズムを明らかにするだけでなく、エネルギー消費の亢進による肥満や2型糖尿病に対する新規治療戦略の創出に繋がることが期待される。現在MAMに発現する分子に着目しており、初年度は褐色脂肪細胞のMAM分子の解析のための細胞株、マウス作製を行っている。本年度は褐色脂肪細胞特異的なMAM分子を欠損するマウスの作製をおこない解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
褐色脂肪細胞特異的に遺伝子を欠損するマウスの作成、遺伝子を過剰発現する褐色脂肪細胞株、遺伝子をノックダウンした細胞株、遺伝子とタグを融合した蛋白を発現する細胞株の樹立を予定通りおこなっている。網羅的プロテオーム解析を次年度の施行予定である。
細胞株の作製及び、熱産生、カルシウム動態、電子顕微鏡によるMAMの構造的な変化などを解析し、個々の知見を統合する。MAMがマウス個体の熱産生制御、マウス全身のエネルギー代謝制御をどのようにおこなっているか研究を推進する予定である。
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Curr Issues Mol Biol.
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