研究課題
膵臓β細胞の容積と機能が適切に維持されると考えられるが、その機能制御の詳細な分子機構には不明な点が多い。本研究では、膵β細胞の分化成熟、機能制御にどのようなシグナル系が関わるか、β細胞の不均一性を作り出す分子機構を通じて、β細胞について統合的に理解することを目指す。そのため、膵臓β細胞の機能維持に関わる遺伝子について解析することにより、膵臓β細胞の統合的理解につながることを目指す。本研究では、2型糖尿病のゲノムワイド解析で注目されているC2CD4遺伝子の機能解析を明らかにすることを目指している。そのため、C2CD4遺伝子と相互作用する分子について、たんぱく質近傍ラベリング法により検索した。その結果、複数の候補遺伝子を得た。MIN6β細胞株におけるC2CD4遺伝子ノックダウンおよび遺伝子強制発現の表現型解析を行ったところ、候補遺伝子との機能的な相関が期待される結果が得られている。また、膵臓β細胞からのインスリン分泌に対して抑制的に働くドパミンシグナルを伝達するDrd1及びDrd2のヘテロノックアウトマウスを作成し、解析したところ、Drd2遺伝子ヘテロノックアウトマウスにおいて、耐糖能の亢進が見られた。Drd2遺伝子のノックアウトマウスの単離膵島においてインスリン分泌の亢進が見られたことから、次年度はβ細胞特異的な変異マウスの作成と解析を進める予定。Drd1遺伝子ヘテロノックアウトマウスは表現型は見られなかったが、β細胞特異的な遺伝子ノックアウトマウスを作成解析を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
・C2cd遺伝子と相互作用する分子について、たんぱく質近傍ラベリング法により検索し、複数の候補遺伝子を得て、その解析を行った。候補遺伝子のうち、解糖系において機能する分子があったため、膵臓β細胞株を用いてC2CD4遺伝子の遺伝子ノックダウン株を作成し解析を行ったところ、C2CD4遺伝子ノックダウンβ細胞株において、細胞内ATP産生能の低下傾向がみられた。これらの結果より、C2CD4遺伝子が候補遺伝子との相互作用により解糖系の活性を制御することが考えられる。・Drd2ヘテロノックアウトマウスについて耐糖能試験を調べたところ、野生型マウスより優位に耐糖能が改善したことが分かった。また、Drd2ヘテロ欠損マウスにおいてインスリン分泌が有意に増加していること、単離膵島においても同様な結果が得られたため、Drd2によるインスリン分泌に対する抑制が外れたためであると結論した。Drd1については、ヘテロ欠損マウスにおいて野生型と比べて優位な差が見られなかった。
・C2CD4遺伝子との相互作用を示す遺伝子の候補が得られたものに関して、実際相互作用しているエビデンスを得るために、Duolinkによる評価を行い、相互作用の実体をとらえる予定である。また、インスリン分泌の際にC2CD4が関与することも考えられるため、全反射顕微鏡によるインスリン分泌の動態解析を進める予定。・Drd2、Drd1について、β細胞特異的な遺伝子欠損マウスを作成して、表現型について詳細に解析する予定。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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