研究課題/領域番号 |
21H02989
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
江口 晋 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80404218)
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研究分担者 |
梅澤 明弘 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 再生医療センター, 再生医療センター長 (70213486)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞シート化 / ミニ腸移植 / 短腸症候群 / ES細胞 / 小腸化大腸 |
研究実績の概要 |
ES細胞より作製した小腸組織(ミニ腸)を利用した短腸疾患治療技術を確立するとともにミニ腸を加工した細胞組織を免疫不全マウスへ移植し生着したミニ腸の特性を評価するため、細胞シート形状ならびに球状組織上での移植を試みた。 まずミニ腸を半割し細胞シート状にした結果、上皮陽性(CK19陽性)と間葉陽性(Vimentin陽性)の2極性を維持することを確認した。この加工したミニ腸シートを免疫不全マウスの皮下に移植し移植7日目で犠牲死させた組織像では粘膜構造(CK20陽性)ならびに腸特有のバリア構造(CLDN3陽性)を維持したまま生着する様子を確認した。ホストマウスからの血管誘導は確認できず粘膜突起の成熟化にまでは至っていなかったものの、生体内において上皮-間葉の細胞極性を維持したまま生着することを確認した。 次に球状形態のままのミニ腸を血流が豊富な大網部分へ移植し細胞形状ならびに細胞極性への影響を検討した。移植したミニ腸組織において粘膜様構造(CK20)が確認されるとともに上皮陽性(CK19陽性)と間葉陽性(Vimentin陽性)の2極性を維持することを確認した。また微量ながらCD31陽性細胞がミニ腸組織内部にて確認されたものの、粘膜突起の成熟にまでは至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はミニ腸を加工し細胞シート化した組織を生体内にて移植し構造の維持、機能評価を実施した。シート化することでミニ腸特有の上皮ならびに間葉系構造への影響は見られずシート化に関しては問題ないことを証明した。また腸管粘膜への移植の前段階にて生体内でのミニ腸の生着性の評価を重視し、移植後もミニ腸の構造体は壊れることなく1週間生体内で生着することを確認した。さらに、細胞シート移植以外の移植方法としてミニ腸を基にした腸管組織形成法に関しても評価したが、生体内での生着並びに構造維持においては問題ないことを明らかにした。一方で短腸モデル作製に関しては既報の手法を用いてモデル作製を実施した結果、一定量の小腸を切除したモデルにおいては1週間程度の生存は確認した。これらの実施内容は当初の計画において初期段階は進行しており、本研究の目標の第1段階はクリアした。今後は腸管粘膜部への細胞シート化ミニ腸の移植を実施するとともに、移植後の機能に関しても評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ミニ腸組織を用いた腸管様構造の構築ならびに短腸症候群治療技術の確立を試みるため、以下の2点について検討を実施する。 (1)ミニ腸由来細胞シートの小腸粘膜への移植:加工したミニ腸シートを粘膜剥離させた大腸部位に移植させその生着性を免疫染色等にて確認するとともに、短腸モデルマウスへの移植に伴う大腸の小腸化による生存性に関して評価する。 (2)ミニ腸の異所移植に伴う腸管様構造の構築:これまでの研究にて血流が豊富な部位においてホスト動物からの血管新生が誘導される可能性を示した。そこで腸間膜や肝臓表面といった血流が豊富な移植部位に移植し生体内の血流供給を利用して生体内移植グラフトを構築させ、その構造ならびに機能性について評価を行う。
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