研究課題
近年、細胞に新たな治療機能を搭載し、疾患の原因制御を目指す、「デザイナー細胞」医薬品の開発が大きく注目される。「デザイナー細胞」 開発の一領域として非自己の細胞の利用を可能にすることが極めて重要な課題となっている。申請者らは難治性腫瘍のT細胞輸注療法に用いる 輸注T細胞の内因性T細胞レセプターやMHC発現を抑制し、移植片対宿主病(GVHD)や拒絶反応を軽減する「ステルスT細胞」技術の開発を進めてきた。本研究ではこれまでの研究を発展させ、CD4陽性T細胞、貪食細胞、NK細胞を含む広い免疫系からの攻撃を避けることが可能になるようステルスT細胞のステルス性を向上させる。さらに、遺伝子改変方法についてsiRNA付与独自開発ベクターを用いる事により独自性を担保した非自己デザイナーT細胞を開発し、難治性腫瘍に対する新規で有効な遺伝子改変T細胞療法の臨床試験実施に繋げることを目指す。2021年度には以下の研究実績が達成された。(1)貪食細胞からの攻撃を回避する目的でヒトCD47遺伝子をクローニングし、CD47発現レトロウイルスベクターを作成した。本レトロウイルスベクターを用いて、293T細胞を始め複数の細胞株にCD47分子を細胞表面上に強制発現させることに成功した。(2)ヒト筋芽細胞を用いて、CRISPR/Cas9システムによりベータ2ミクログロビュリンを欠損させ、MHC class Iを発現しない筋芽細胞を作成し、これらがCD8 陽性T細胞において認識されないことを確認した。(3)ヒトGPX4遺伝子をクローニングし、発現レトロウイルスベクターを作成した。GPX4強制発現細胞株においてフェロトーシス抵抗性を検討した。
1: 当初の計画以上に進展している
CD47強制発現、MHC class I欠損細胞の作成が順調に進み、非自己デザイナー細胞の開発が順調に進んでいる。加えて、腫瘍不均一性を克服するためにフェロトーシス誘導剤とT細胞療法を組み合わせる戦略を検討している中で、フェロートーシス誘導剤にT細胞が障害されることを避ける為にT細胞にGPX4を強制発現させるための研究も追加で進展し、より高性能な非自己デザイナーT細胞の開発が進展した。
2022年度以降は以下の方針で研究を推進することを計画している。(1)これまでに作成したレトロウイルスベクターを用いて、CD47強制発現T細胞を作成し、貪食細胞に対する抵抗性を検討する。(2)CIITAに対するCRISPR/Cas9及びsiRNAを作成し、MHC class II欠損T細胞を作成し、CD4陽性T細胞への抵抗性獲得を検討する。(3)CD47強制発現、CIITA欠損、GPX4強制発現を同時に達成するベクターを構築し、CAR-T細胞、TCR-T細胞に適用することにより多機能な非自己デザイナーT細胞を開発する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Immunotherapy of Cancer
巻: 10 ページ: e003958
10.1136/jitc-2021-003958
Journal of Clinical Medicine
巻: 10 ページ: 4221
10.3390/jcm10184221
https://www.med.nagasaki-u.ac.jp/m-oncology/