研究課題/領域番号 |
21H02990
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
池田 裕明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40374673)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非自己細胞 / デザイナー細胞 / がん / 免疫療法 / siRNA |
研究実績の概要 |
近年、細胞に新たな治療機能を搭載し、疾患の原因制御を目指す、「デザイナー細胞」医薬品の開発が大きく注目される。「デザイナー細胞」開発の一領域として非自己の細胞の利用を可能にすることが極めて重要な課題となっている。研究代表者らは難治性腫瘍のT細胞輸注療法に用いる 輸注T細胞の内因性T細胞レセプター やMHC発現を抑制し、移植片対宿主病(GVHD)や拒絶反応を軽減する「ステルスT細胞」技術の開発を進めてきた。本研究ではこれまでの研究を発展させ、CD4陽性T 細胞、貪食細胞、NK細胞を含む広い免疫系からの攻撃を避けることが可能になるようステルスT細胞のステルス性を向上させる。さらに、遺伝子改変方法について siRNA付与独自開発ベクターを用いる事により独自性を担保した非自己デザイナーT細胞を開発し、難治性腫瘍に対する新規で有効な遺伝子改変T細胞療法の臨床試 験実施に繋げることを目指す。また、フェロトーシス誘導剤と非自己デザイナーT細胞との併用により、腫瘍不均一性を克服した非自己デザイナーT細胞によるT細胞輸注療法を開発することを目指す。 2022年度には以下の研究実績が達成された。 (1)貪食細胞からの攻撃を回避する目的でクローニングしたヒトCD47遺伝子を発現するレトロウイルスベクターを用いて、ヒト末梢血由来T細胞にCD47遺伝子を発現させることに成功し、CD47強制発現非自己デザイナーT細胞を作成することに成功した。 (2)非自己デザイナーT細胞とフェロトーシス誘導剤との併用によって、腫瘍不均一性を克服したT細胞輸注療法を開発する目的で、ヒト末梢血由来T細胞のフェロトーシス誘導剤への濃度依存的な感受性を確認した。 (3)昨年度作成したヒトGPX4遺伝子発現レトロウイルスベクターを用いて、GPX4強制発現非自己デザイナーT細胞を作成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
レトロウイルスベクターを用いてCD47分子を強制発現し、MHC class Iを欠損したT細胞の作成が順調に進み、非自己デザイナー細胞の開発が順調に進展している。加えて、腫瘍不均一性を克服するためにフェロトーシス誘導剤とT細胞療法を組み合わせる戦略を検討している中で、フェロートーシス誘導剤にT細胞が障害されることを避ける為にGPX4を強制発現させたT細胞の作成にも成功し、より高性能な非自己デザイナーT細胞の開発が順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降は以下の方針で研究を推進することを計画している。 (1)これまでに作成した作成したCD47強制発現非自己デザイナーT細胞について、免疫不全マウスを用いたインビボ評価系において、抗腫瘍効果と、拒絶回避効 果を検討する。 (2)これまでに作成した作成したGPX4強制発現非自己デザイナーT細胞について、フェロトーシス誘導剤への抵抗生を検討し、フェロトーシス誘導剤との併用において、抗原陰性 腫瘍細胞に対する効果的な抗腫瘍効果を示すことをインビトロの細胞障害性試験と免疫不全マウスを用いたインビボ評価系において確認する。この技術をCAR-T細胞、TCR-T細胞に適用することにより、腫瘍不均一性を克服した、多機能な非自己デザイナーT細胞を開発する。
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