研究課題/領域番号 |
21H02994
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小阪 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (10415680)
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研究分担者 |
大内 克洋 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 准教授 (20322084)
新井川 弘道 東北大学, 大学病院, 講師 (80636027)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 体外肺灌流 / 冷保存 / 肺機能評価 |
研究実績の概要 |
肺移植は重症肺疾患患者に対する根源的な治療法として実施されているが、ドナー不足が問題となっている。そのため、ドナー肺の保存時間の延長と肺機能の評価を目的に体外肺灌流(EVLP)が注目されている。臨床におけるヒト肺の保存において、冷保存とEVLPを組み合わせることで、合計14.5時間の肺保存が実現できたと報告があるが、肺の冷保存とEVLPの切り替えには、煩雑な作業と熟練した技術が必要である。さらに、冷保存とEVLPを組み合わせた最適な肺の保存条件は明らかになっていない。本提案ではドナー肺の冷保存とEVLPを組み合わせた体外肺保存装置を開発し、ドナー肺の長期保存のための最適条件の検討を行う。2022年度は、2021年度に開発した体外肺保存装置の妥当性評価を行うためのコントロール群となるブタ肺を用いた長期のEVLPの動物実験を実施した。まず、これまでのEVLPの試験で実施してきた灌流液に赤血球を含むLund式EVLPのプロトコルから、長期のEVLPが可能な灌流液に赤血球を含まないToronto式EVLPのプロトコルにプロトコルを変更するための装置の改良を実施した。Toronto式EVLPシステムの有効性を確認するため、傷害を与えていないブタ肺を用いた4時間のEVLP試験を実施した。その結果、EVLP中及びEVLP後に得られた肺の生理パラメータより、肺は移植可能な機能を有しており、開発したEVLPシステムによる機械的損傷の問題が生じていないことがわかった。次に、ドナー肺の冷保存とEVLPを組み合わせた体外肺保存装置のコントロール群となる長期のEVLP試験を実施した。その結果、肺の生理パラメータはEVLP開始後、8-10時間で悪化し、EVLP後に重度の肺水腫が生じた症例も確認された。次年度に体外肺保存装置を用いてドナー肺の冷保存とEVLPを組み合わせ、コントロール群と比較することで、肺機能の悪化の抑制を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終目標であるドナー肺の冷保存とEVLPを組み合わせた体外肺保存装置の比較対象となるコントロール群である長期のEVLP試験を実施し、肺機能を評価することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ドナー肺の冷保存とEVLPを組み合わせた体外肺保存装置を用いた長期のEVLP試験を実施し、2022年度に実施したコントロール群と比較することで、その有用性を検証する。また、2021年度に開発した肺機能の評価法を適用することで、ドナー肺の冷保存とEVLPを組み合わせることのドナー肺に与える影響について検討し、最終的に体外肺保存装置を用いた肺の最適な長期保存条件を明らかにする。
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