研究課題/領域番号 |
21H03000
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90542118)
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研究分担者 |
石井 秀始 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (10280736)
小林 省吾 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (30452436)
野田 剛広 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50528594)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 個別化治療 / 膵癌 / 集学的治療 |
研究実績の概要 |
膵癌はたとえ切除可能であっても予後が不良で、術前に化学療法や放射線療法を行う集学的治療が推奨されている。しかし、膵癌に対する化学療法・放射線療法の奏功率は高くなく、どの症例にも画一的な治療を術前に行うことはむしろ切除のチャンスを失う危険性をはらんでおり、術前療法の効果予測法の開発および効果を高めるための新規治療法の開発は急務である。本研究では、治療抵抗性に関わるmicroRNAとそのターゲット蛋白やパスウェイを同定し、術前化学療法・放射線療法の効果予測法を構築すること、さらには効果を増強するための新たな治療戦略を提案することを目的としている。具体的には、効果予測に関与するmicroRNAの作用メカニズムを解明し、それを制御する新規治療法の基礎を構築することにより、効果不十分な症例において効果を高める「術前療法の感受性向上システム」を構築することを目標としている。 本研究では前年度までに、術前療法を行って良好な効果を認めた症例と効果不良の症例での末梢血中のmicroRNA発現の差を網羅的に解析し、術前療法に関与するmicroRNAの候補を同定し、文献的考察も加えて、候補を4種に絞り込んだ。4種のmicroRNAの強制発現及び発現抑制を行い、膵癌細胞株に導入することにより、薬剤感受性が変化することが確認できたが、一方で予想に反して薬剤感受性が変化しないもの、あるいは想定とは逆の感受性の変化を来すものなど様々であった。 単一のmicroRNAでは薬剤感受性を変化させるには不十分である可能性が示唆されたが、一方でこれらの複数のmicroRNAを用いることにより、術前療法の効果予測ができる可能性が極めて高いことが明らかとなった。そこでmiRNAの発現パターンを網羅的に解析し、どのようなパスウェイが変化しているのか、miRNAのターゲットとなる遺伝子は何なのかを網羅的に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、術前療法を行って良好な効果を認めた症例と効果不良の症例での末梢血中のmicroRNA発現の差を網羅的に解析し、術前療法に関与するmicroRNAの候補を同定し、文献的考察も加えて、候補を4種に絞り込んでおり、4種のmicroRNAの強制発現及び発現抑制を行い、膵癌細胞株に導入することにより、薬剤感受性が変化することが確認できたが、一方で予想に反して薬剤感受性が変化しないもの、あるいは想定とは逆の感受性の変化を来すものなど様々であった。このことはmicroRNAが多数の遺伝子を標的としているものであることから、当初より想定される事態であり、そのこと自身が進捗の障壁になるものではないと考えている。むしろ、microRNAの変化を網羅的に捉え、パスウェイとしてどのような方向性に変化しているかに着目するという発想に至り、その解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
術前療法の効果予測を行うために使用可能なmicroRNAとして、本研究では複数のmiRNAが候補として挙がってきている。これらの候補miRNAは、それぞれ単独でも癌細胞の抗癌剤感受性に変化をもたらすことも明らかになりつつあるが、複数を組み合わせる事によってさらにその予測能を上げられる可能性があるため、最適な組み合わせを見いだすべく、microRNAの変化を網羅的に捉える方策を行っている。
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