研究課題/領域番号 |
21H03004
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武石 一樹 九州大学, 大学病院, 特別教員 (50733713)
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研究分担者 |
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
吉住 朋晴 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80363373)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 脂肪肝 / NASH / 人工肝臓 |
研究実績の概要 |
本邦でも非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease; NAFLD)が増加しており、治療法の確立は急務である。ゲノムワイド関連研究によりpatatin-like phospholipase domain containing 3 (PNPLA3) 遺伝子の変異とNAFLDの発症が報告されたが、メカニズムについては明らかになっていない。本研究の目的は、PNPLA3遺伝子変異がある細胞よりiPS細胞を作成し、PNPLA3遺伝子変異がある人工肝臓を作成することで、NAFLD発症メカニズムを明らかにし、治療法を確立することである。 まず、肝切除症例よりDNAを抽出し、PNPLA3変異の症例を3例抽出した。その線維芽細胞を培養することに成功し、PNPLA3変異を持った線維芽細胞を大量培養した。大量培養した線維芽細胞に山中遺伝子をエレクトロポレーションにて導入し、iPS細胞を作成したところ、3株のiPS細胞を作成できた。作成したiPS細胞の多分化能を免疫染色にて確認することができた。 iPS細胞を分化させ、内胚葉、肝細胞に分化させた。分化後の肝細胞は、HNF4alphaを発現し、アルブミンなどの発現もあり、肝細胞への分化は、良好であった。 作成したiPS由来肝細胞を遊離脂肪酸の培養し、肝細胞内の中性脂肪の濃度を測定した。 また、肝星細胞は、肝臓類洞内に存在し、NASHの発症は、肝細胞の脂肪化だけでなく、肝星細胞より放出されるサイトカインにより活性化される炎症細胞浸潤とそれに続くremodelingが関与している。今回、iPS細胞より星細胞への分化も成功した。PNPLA3遺伝子変異があるiPS細胞も同じように星細胞を作成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コントロールとなるPNPLA3野生株のiPS細胞を作成することに難渋している。遺伝子変異を持っていない検体からiPS細胞を作成する予定であったが、その場合、そのほかの遺伝子が同じでない可能性が高く、脂肪肝発症の違いを明らかにする上で、他の遺伝子の相違を否定できないと考え、変異株のiPS細胞を遺伝子変異させ、野生株に戻すことが必要と考えた。遺伝子変異を起こさせ、Single Cell培養を行い、シークエンスをおこなっているが、野生株に戻したiPS細胞を抽出できておらず、まだ、コントロールができていない状態。
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今後の研究の推進方策 |
野生株のiPS細胞を作成し、iPS由来肝細胞を作成し、PNPLA3変異株と野生株を持ったiPS由来肝細胞を作成し、肝細胞内の脂肪化を評価する。その後にiPS由来星細胞も作成し、共培養実験を行い、脂肪肝発症メカニズムをRNA Seqを行うことで突き止める。 iPS細胞より作成した肝細胞、星細胞をラット肝を脱細胞化したScaffoldに導入し、人工肝臓を作成する予定である。遊離脂肪酸を含むメディウムで培養し、脂肪肝の発症をH.E染色で比較する。脂肪化に関わるカスケードおよび責任遺伝子を同定する。ヒトマクロファージも導入し、炎症反応を比較する。また、マクロファージの発現プロファイルを比較する。RNA Seqにて同定した標的遺伝子を改変するためにCRISPR-Cas9を導入したiPS細胞からiPS-Heps、iPS-星細胞を作成後に、候補の遺伝子を選択的に改変し、肝細胞の脂肪化を評価し、治療ターゲットとなる遺伝子を絞り込む。治療ターゲットとなる遺伝子を治療薬を実際に人工肝臓に使用し、同定した薬剤をiPS-Heps、iPS-星細胞、ミニ肝臓に投与することで、遺伝子の機能解析を免疫染色、qPCRにて行う。脂肪肝の改善を病理像にて、炎症性サイトカインの減少をエライザにて評価する治療効果を明らかにする。
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