研究課題/領域番号 |
21H03006
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松尾 洋一 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40381800)
|
研究分担者 |
林 祐一 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (60811726)
坪井 謙 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80592500)
今藤 裕之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80790641)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 膵癌 / IL-1α / IL-1ra / IL-1RⅠ / 抗癌剤耐性 / 放射線耐性 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
膵癌の予後は極めて悪く根治手術を行ってもすぐに再発する.現在では術前の化学放射線療法が推奨されているが,ほかの癌にくらべて効果は低い.その理由の1つに,治療に対する感受性の低さがあげられる.したがって,耐性メカニズムを解明し,術前治療の感受性を高めることは,真の根治手術を導き,予後改善のブレイクスルーになる.一方我々は,抗癌剤や放射線への耐性を有する膵癌細胞株の樹立に成功し,網羅的な遺伝子解析の結果,膵癌の細胞膜レセプターであるIL-1RIに着目した.我々はすでに,IL-1RIを介するシグナルが,膵癌の浸潤や転移に関与することを世界に先駆けて報告している.本研究では,抗癌剤および放射線耐性のメカニズムの解明と,IL-1RIの機能解析および新規治療薬の開発を目指す. 2022年度の研究実績は以下のとおりである. ①ゲムシタビン感受性株(Gem-S)と耐性株(Gem-R),放射線感受性株(R-S)と耐性株(RR)の樹立:Gem-Rとして2株樹立(MIA PaCa-2および AsPC-1), RRとして2株樹立(MIA PaCa-2およびSW 1990)に成功している.Gem-RはさらにCapan-2があらたに樹立目前である. ②ゲムシタビン感受性株(Gem-S)と耐性株(Gem-R)の浸潤能を比較:親株に比較してAsPC-1 Gem-およびMIA PaCa-2 Gem-Rは浸潤能が高く,IL-1Ra処理によってこれは抑制された. ③ゲムシタビン耐性化に伴なうIL-1RtypeⅠの発現の変化:RT-qPCRを用いてIL-1RⅠのmRNAレベルの発現を比較検討した.その結果,AsPC-1およびMIA PaCa-2の両株でIL-1RⅠの発現が亢進していることが確認できた.さらに同様の現象をwestern blotでも確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
vitroの研究は進んでいるが,動物実験まで進んでいない.
|
今後の研究の推進方策 |
①転移には腫瘍血管新生が重要であることを報告してきた.独自の血管新生モデルを用い,Gem-RおよびR-Rの血管新生能が亢進していることを確認する.研究室では,膵癌のIL-1/IL-1RIシグナルが腫瘍血管新生を亢進することを,先駆けて報告している.②ゲルシフトアッセイを用いて,Gem-RおよびR-Rにおける転写因子NF-κBの活性を評価する.研究室では,転移能に転写因子NF-κBの活性が相関していることを報告してきた.さらにNF-κBは,VEGFやIL-8といった血管新生因子の産生を制御し,治療標的となることを見出した.耐性化に伴うNF-κBの活性亢進を評価し,耐性化に伴うIL-1/IL-1RIシグナル亢進,NF-κB活性亢進,微小転移亢進のメカニズムを解明する.③ヌードマウス同所移植モデル:ルシフェラーゼを遺伝子導入した膵癌細胞(Gem-SまたはGem-R)をヌードマウスに同所性に移植し,Gem, IL-1ra, Gem+IL-1raを腹腔内投与する.IVIS Imaging Systemを用いて経時的に腫瘍サイズを測定する.最後に組織を採取し,Ki-67およびCD31染色にて腫瘍の増殖能および血管新生能を評価し,IL-1raの抗腫瘍効果を検討する.同様にR-SまたはR-Rをヌードマウスに同所性に移植し,放射線治療(CAX-210)におけるIL-1raの相乗効果を検討する.以上により,化学放射線治療に対するIL-1raの効果を確認する予定である.
|