研究課題/領域番号 |
21H03027
|
研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
堀内 浩 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特別訪問研究員 (60760733)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ミクログリア / 液性変化 / 神経細胞 / アストロサイト / 相互作用 |
研究実績の概要 |
脳内免疫細胞ミクログリアは細胞外環境の化学的・物理的な変化に適切に応答しながら、神経細胞、グリア細胞、血管との相互作用によって恒常性や脳高次機能を発現する。本研究では、ミクログリアの脳内の液性変化に対する応答性を時空間的な計測手法を用いて理解しながら、その応答性の制御によって表出する生体機能への影響を捉えることで、ミクログリアの生理的機能を明らかにすることを目指した。これまでに、脳内の浸透圧低下によってミクログリアの突起が形態的に変化する可能性を見出している。しかしながら、これが本当に浸透圧の変化を受けて変化しているのかは生体検証では困難であり、他の物理的要因によって生じている可能性を排除できていなかった。そこで本年度は、細胞外の物理的な環境変化に対する応答性を明らかにするために、脳スライス標本を作製し、浸透圧を変化させることによってそれに伴う形態変化を観察した。その結果、浸透圧低下によって同様の形態変化を示すことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の通り、当初の計画を遂行することができたため。これまでに、蒸留水の腹腔内投与によってミクログリアの突起形態が伸展することを見出している。さらに、事前の浸透圧上昇によって突起変化が抑制されることを見出し、この責任分子を同定した。先行研究によって、水チャネルAQP4を介して脳実質への流入が生じることが分かっている。したがって、現時点では水の流入によって脳内の浸透圧低下が生じ、それによる細胞膜上の張力の変化を検知することで形態変化を起こすものと予想している。しかしながら、蒸留水の腹腔内投与は脳実質内の浸透圧低下を起こすだけでなく、脳浮腫による頭蓋内圧亢進を引き起こす可能性があった。そこで、本年度は急性脳スライスを用いてミクログリアに浸透圧刺激を行い、突起形態の変容について2光子イメージングを用いて検証した。その結果、浸透圧の低下に伴って、突起が伸展することを明らかにできた。さらに責任分子の機能制御によっては形態的な応答性が消失した。
|
今後の研究の推進方策 |
脳内の浸透圧低下における重要分子としてAQP4を想定しているが、ミクログリアの突起形態の変化に関わるかは明らかでない。そこで、AQP4の薬理学的あるいは遺伝学的操作によって脳内への水の流入を制御した場合に、形態変化が阻害されるかを明らかにする。カルシウムイメージングなどの活動計測を合わせて行うことで、ミクログリアがどのような時空間規模で応答するのかを明らかにできると考えられる。それによって、形態的な応答だけでなく、機能的な応答性を明らかにする。脳梗塞やてんかんにおいては水チャネルAQP4を介して脳内の浸透圧が低下することが報告されている。そこでAQP4を薬理的に阻害した場合に形態的な応答性が抑制されるのかを示す。
|