研究課題/領域番号 |
21H03039
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齋藤 竜太 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10400243)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 大学病院, 教授 (00217548)
大橋 雄二 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (50396462)
金森 政之 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (60420022)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薬剤送達 / 中枢神経系 / 超音波 / 定位脳手術 |
研究実績の概要 |
1. 超音波併用効果の検証 圧電応用デバイスによる超音波を用いた薬剤拡散効果確認実験を実施した。デバイス(PZTの最適周波数にて駆動)の有無による脳を模したゲルにおけるエバンスブルー色素の浸透幅の比較を実施した。集束点におけるエバンスブルー色素の浸透幅の確認を行ったところ、超音波を使用した際に浸透幅が増大することを確認した。 収束点(10cm)において超音波併用の有無による浸透幅の差が大きくなることを確認した(浸透幅2mm→3mm程度)。 深さを1/2(5cm)(集束点から1/2の距離、距離が1/2となりエネルギーは大きくなる可能性)にした際の超音波有無による比較でも、超音波併用時に浸透幅が増大することを確認した。デバイスの連続使用による実験結果の差異があることが判明し、薬液接触による基盤のはがれ、劣化・破損が考えられたことからデバイスの改良を実施した。 2. 臨床応用に向けた基盤整備 実臨床使用に向けた周辺機器整備をすすめた。具体的には実臨床に使用される定位脳手術装置に超音波併用デバイスを装着固定する方法を模索した。フレキシブルに固定できる把持棒の直径、長さなどの形状を模索し、新たに把持部について図面を作成した。この図面をもとに 3Dプリンタにて試作し定位脳手術装置への取り付け確認を行った。把持した際の実手術使用には、デバイス部分の長さが問題になることが判明した。再度図面を修正し、校正治具、固定治具の作成を行っている。脳の定位手術においては、正確に刺入することも重要となるが、デバイスと把持棒を含めた長さが定位手術装置での精密誘導上の問題となる可能性も判明しており、改善策を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波併用脳内局所薬剤送達システムの臨床応用に向けた研究を二つの大項目にわけて実施することを予定して研究開発を進めている。最初の項目が超音波併用効果の検証であるが上記、概要に記載したとおり、超音波を併用した方が、brain phantom gel(脳を模したゲル)内での薬剤拡散が向上することを数値的に確認した。経時的にその効果が減弱することも捉えられ、試作デバイスが連続使用による劣化を起こしていると判断。試作デバイスの見直しを実施して、この問題解決を進めている。また、2つ目の項目が臨床応用に向けた基盤整備である。実験系としてゲル内での使用は可能であることが確認できたが、実臨床につなげるには、装置として実際の手術に用いる定位脳手術装置に搭載できる必要が生じる。実臨床で使用する定位脳手術装置は、針の長さ分を刺入することのみを想定していることから試作デバイスの本体部分が問題となる。超音波発生装置と刺入針の間を定位手術装置で把持すると超音波の伝達に不具合が生じることが確認された。そのため、デバイスの遠位側に把持棒を付けることとして、その試作を進めている。図面を作製した上で3Dプリンターを使用して把持部分を作製して検証を進めている。定位脳手術においては、刺入がほとんど誤差のない中で実施されることが前提になることから、把持棒の長さ等、誤差につながるいくつかの問題があり、改良を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
超音波併用で薬剤分布効率を向上できることはほぼ確認された。実臨床に向けて、現在のシステムではその本体の長さが問題になる可能性が分かってきた。精密なデバイス挿入装置の作製を進めるとともにデバイスの形状を検討する。実臨床に向けては、我々が開発した超音波併用装置のように脳内で超音波を発生する医療機器が存在しないため、レギュレーション上の問題も存在(臨床応用に向け、取得すべきデータも整っていないのが現状)することからこの部分の整備も含めて実臨床へ応用できる装置の作製を進める。
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