グリオブラストーマの再発を防ぎ長期予後改善を目指す上で、腫瘍中のがん幹細胞を標的とする治療法の開発は一つの重要なカギを握るものと考えられている。研究代表者らはこれまで独自のグリオーマ幹細胞研究を展開し、シグナルキナーゼJNKの活性を阻害することでグリオーマ幹細胞の幹細胞性を、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化(OXPHOS)を阻害することでその生存を、それぞれ抑制できることを示してきた。本課題ではこれらの知見を踏まえ、JNK阻害薬とOXPHOS阻害薬のそれぞれについて既存薬のスクリーニングを行いつつグリオーマ幹細胞の幹細胞性ないし生存を抑制できる薬剤を探索するとともに、さらにこういった研究を展開させて、JNK阻害薬、OXPHOS阻害薬に限らず幅広くグリオーマ幹細胞抑制効果を有する薬剤を探索している。そしてその結果本課題においてこれまでにJNK阻害薬、OXPHOS阻害薬スクリーニングの過程で見出したHDAC阻害薬domatinostatのグリオーマ幹細胞選択的増殖抑制効果や小分子キナーゼ阻害薬CEP1347のMDM4発現抑制を介したp53依存的グリオーマ細胞増殖抑制効果を明らかにし、報告してきた。 その後研究代表者らは上記に加えてHDAC阻害薬givinostatがSP1の発現抑制を介してSP1依存的MGMT発現を抑制しグリオーマ幹細胞のテモゾロミド感受性を高めることを明らかにした。またMDM4発現抑制作用を有するCEP1347がMDM2阻害薬RG7112と協調的に作用してグリオーマ細胞のp53活性化・増殖抑制を効率よく誘導することを見出し、特にRG7112についてはMDM2を過剰発現するグリオーマ幹細胞に対して極めて高い増殖抑制効果を示すことを明らかにした。
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