自殺遺伝子搭載ウイルスベクターを搭載した神経幹細胞(NSC)を用いた悪性神経膠腫の治療に関する研究を行った。ウイルスベクターがマウス脳内に感染・拡散する様子をin vivoで経時的にモニタリング可能なシステムを構築した。また、マウス脳の透明化プロトコルの最適化、ライトシート顕微鏡による撮影に最適な蛍光タンパク質を選定した。透明化脳のウイルス感染細胞を1細胞レベルで解析することで、ウイルスベクター搭載NSCがより広域の腫瘍細胞に導入遺伝子を感染させられることを確認した。一方でウイルスベクター搭載NSCを樹立する際のウイルス感染効率の低さが問題となっていたが、これら問題を解決する培養法を確立した。ウイルスベクターに搭載する遺伝子に関しても自殺遺伝子を組み合わせ融合することで、増殖が遅いがん幹細胞株に対しても高い腫瘍効果を発揮した。脳腫瘍のみならず難治性体幹部癌に対してもウイルスベクター搭載NSCによる抗腫瘍効果を確認できた。本研究により開発したウイルスベクター搭載NSCは、様々な浸潤性悪性腫瘍にも応用可能であり、新たな癌治療のプラットフォーム技術となり得る。
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