研究課題/領域番号 |
21H03048
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高畑 雅彦 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (40374368)
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研究分担者 |
村上 正晃 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (00250514)
津田 真寿美 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431307)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 免疫チェックポイント / Siglec-15 |
研究実績の概要 |
野生型マウスとシグレック15遺伝子欠損マウスを用いて、アジュバント誘導関節炎をモデルを作成した。シグレック15欠損マウスの二次海綿骨では破骨細胞分化や機能障害により骨吸収が抑制され、軽度の大理石病を呈する。しかし、関節炎を誘導した膝関節や足関節局所ではシグレック15欠損マウスにおいても破骨細胞の分化抑制が生じず、かえって骨破壊の程度は高度であった。また関節炎スコアはシグレック15欠損マウスではより高値であった。過剰な骨破壊が生じる際には、破骨細胞が発現するシグレック15による免疫抑制が生じることを裏付ける結果と考えられた。 転移性骨がんのモデルとして尾動脈から腫瘍細胞を播種することにより作成した。免疫不全マウスを用いて乳癌細胞株MD-MB231細胞を播種したところ高率に下肢骨に骨転移が生じることを確認した。次に同様の手技でマウス乳癌細胞株E0771およびマウスルイス肺がん細胞株を、野生型マウスおよびシグレック15遺伝子欠損マウスに尾動脈経由で移植したが、骨転移発症率は20-30%程度と低かった。骨転移発症率は野生型とシグレック15欠損マウスでは変わらなかった。骨転移が成立した個体を用いて骨破壊の程度や腫瘍進展の程度を評価したところ、シグレック15欠損マウスでは腫瘍進展の程度が低い傾向があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転移性骨腫瘍のモデルには限界があるものの、炎症性骨破壊のモデルである関節炎モデルではシグレック15欠損による破骨細胞の分化抑制が生じず、かえって強い骨破壊や炎症が生じることが明らかとなった。過剰な骨破壊が生じる際には、シグレック15による免疫抑制が生じることを裏付ける結果と考えられ、最重要目標の証明が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
最終段階であるSiglec-15を標的とした治療実験に用いるための中和抗体の供給が難しくなり、十分な効果をもった抗体の入手が困難となったことから、中和抗体作成などの方針展開が必要となった。リガンドは明らかになっていないが何らかのシアリル糖鎖であることは判明しているため、リガンドを標的とした治療なども検討する予定である。
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