研究課題/領域番号 |
21H03049
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 貴子 (千見寺貴子) 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40452982)
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研究分担者 |
齋藤 悠城 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40758702)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 関節リウマチ |
研究実績の概要 |
我々は, 関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis; RA)の滑膜で、有害性老化細胞を中心とした微小環境「老化細胞ニッチ」の形成がRA滑膜炎の真の病態像である可能性に辿り着いた。本研究では、1) RA滑膜の老化細胞ニッチを解明する。ついで、2)老化細胞ニッチの破壊による滑膜炎制御法を確立し、炎症を抑えた滑膜に3)組織の再生を促すヘルパー老化細胞を誘導することで滑膜を“関節構造の再生の場”へと変容し、骨・軟骨の再生を促すことで構造的寛解を超えて再び機能する関節の獲得を目指す。 まず、老化細胞ニッチの解明として、RA患者滑膜を採取し、組織学的解析により老化細胞の同定を行った。RA患者滑膜には複数の細胞老化因子を発現する細胞が存在し、周辺に増殖性の高い細胞の集積を認めている。次に、RA患者滑膜の細胞を滑膜組織由来のfibroblast like synoviocytes(FLS)を単離し、老化細胞と非老化細胞の共培養を実施し、老化細胞ニッチの表現形を解析している。In vitroにおいても、RA由来の老化細胞の周辺で増殖性の高い細胞が集積し、アポトーシス抵抗性、MMPなど関節破壊に関連する因子の上昇を認めている。次年度は、老化細胞ニッチ因子ならびにニッチ因子弱点を明らかにするため、老化細胞ニッチの網羅的解析を行うと同時に、候補に上げられたニッチ因子についてノックアウトを行い、細胞ニッチの形成が阻害されるか?老化細胞ニッチを形成する細胞の細胞死を誘導できるか?を検討する。次に、同定した老化細胞ニッチの弱点をもとに、FDA承認薬を用いてニッチ破壊薬の同定を行う。さらに、RAにおいて老化細胞ニッチが関節炎の発症と進行に関与するかを明らかにするため、FLS細胞に細胞老化を誘導し、老化細胞を野生型マウスの膝関節内に投与して、滑膜炎が誘導されるか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、RA患者滑膜の老化細胞ニッチ解明のため、RA患者滑膜および外傷などにより外科的手術を必要とする患者から滑膜組織を採取し、組織解析および細胞を単離して解析を実施した。COVID-19により、一部患者サンプルが取りにくい時期もあったが、解析は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、老化細胞ニッチを形成した細胞集団からRNAを抽出し、RNA-seq解析にて網羅的な遺伝子発現量解析を行ことで、老化細胞ニッチが形成された時に特異的に増加するニッチ因子の同定を試みる。老化細胞ニッチ因子について、CRISPR/Cas9を用いてそれぞれノックアウトし、老化細胞ニッチの形成が阻害されるか?老化細胞ニッチを形成する細胞の細胞死を誘導できるか?を検討することで、老化細胞ニッチの弱点を同定する。次に、同定した老化細胞ニッチの弱点をもとに、ニッチ破壊薬の同定を行う。FDA承認薬を用いてスクリーニングを行い、アポトーシスを誘導できるか検討する。スクリーニングには、採取したRA患者由来滑膜組織を100mgずつ分取し、候補薬を培地中に添加し、24-48時間培養を行う。培養後の組織を固定し、アポトーシス/細胞老化マーカーとの2重染色を用いて、候補薬が老化細胞特異的にアポトーシスを誘導するか定量する。さらに、免疫組織化学法を用い、老化細胞アポトーシス後のニッチ細胞、貪食等を形態学的に観察する。 次に、RAにおいて老化細胞ニッチが関節炎の発症と進行に関与するかを明らかにするため、Fibroblast like synoviocytes(FLS) 細胞に細胞老化を誘導し、老化細胞を野生型マウスの膝関節内に投与して、滑膜炎が誘導されるか検討する予定を立てている。
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