研究課題/領域番号 |
21H03062
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
川井 章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90252965)
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研究分担者 |
近藤 格 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
市川 仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 部門長 (30201924)
吉田 朗彦 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (80574780)
平田 真 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (50401071)
野口 玲 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30779682)
吉松 有紀 地方独立行政法人栃木県立がんセンター(研究所), 研究所-医療シーズ探索研究G-患者由来がんモデル研究分野, グループ長 (60808632)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肉腫 / プロテオゲノミクス / ゲノム / プロテオーム / プロテオームデータベース |
研究実績の概要 |
肉腫の発生や進展の分子背景を解明し、バイオマーカーや治療標的の候補となる分子異常を同定するために、臨床検体と患者由来肉腫細胞株を用いた網羅的発現解析を行った。対象としたのは悪性抹消神経鞘腫(MPNST)である。MPNSTは抹消神経から発生する肉腫で神経線維腫症1型に合併することで知られており、NF-1、CDKN-2A、PRC2遺伝子の相互作用で発生する。完全摘出のみが根治療法であり、放射線・化学療法に対して抵抗性を示すため、新しい抗がん剤の開発が求められている。凍結保存された腫瘍組織からタンパク質を抽出し、質量分析を用いた解析によってタンパク質の発現プロファイルを得た。そして、手術後の再発の状態をもとに症例・試料を層別化して関連するタンパク質の発現を調べた。また、MPNST細胞株において同様に質量分析を実施し、また、リン酸化酵素の活性を網羅的に調べた(PamStation)。平行して抗がん剤200種類を反応させて応答を調べた。さらに、ゲノムレベルの解析としてNCC Oncopanelを用いて、治療応答性に関わりうる遺伝子の異常も調べた。タンパク質の発現プロファイルから予後不良に関わる分子パスウェイそして治療標的となりうる高発現する候補タンパク質を同定した。また、抗がん剤のスクリーニングから低濃度で抗腫瘍効果を示す既存の抗がん剤を同定した。また、NCC Oncopanelからは治療標的になりうる分子異常を同定した。上記の結果を統合的に解析することで、治療標的とバイオマーカーの候補を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPNSTの凍結腫瘍組織および患者由来培養細胞株を対象としてゲノムからプロテオームまで分子の異常を調べ、臨床的な有用性が示唆される候補分子を同定できた。また、肉腫細胞株の樹立にも成功した。アプローチとしては当初の計画通りに進捗している。一方、動物実験では肉腫細胞の生着がうまくいかず予定どおりの結果は得られていない。また、同じアプローチを複数の肉腫にも展開する計画であるが、他の肉腫についてはデータ採取中であり統合する段階にはいたっていない。また、OncoProGxを使った解析を計画していたのだが、使用するゲノムデータ(他プロジェクトで採取中)が間に合わず、また、ソフトウェアの解析も並行しており、本研究で使用するにいたらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍組織を用いたプロテオーム解析(質量分析、PamStation)が本研究で行うプロテオゲノミクス研究の基盤となる。今までは凍結腫瘍組織を使ってきたのだが、NCCバイオバンクに保管されている肉腫の凍結腫瘍組織は限られており、研究が制限されていた。近年、ホルマリン固定標本からの解析のレベルが上がったとの報告が相次いでおり、本研究にも応用したいと考えている。また、リン酸化酵素の活性を測定し、活性が亢進したリン酸化酵素を同定した際に、それがドライバーとして機能していることを証明する実験系の立ち上げが必要である。プロテオーム解析としては発現のみならずタンパク質複合体の解析も準備を進めており、今後の方策としては発現と複合体の解析を平行して行いたいと考えている。
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