研究課題/領域番号 |
21H03063
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研究機関 | あいち小児保健医療総合センター(臨床研究室) |
研究代表者 |
鬼頭 浩史 あいち小児保健医療総合センター(臨床研究室), 臨床研究室, 副センター長 (40291174)
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研究分担者 |
三島 健一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40646519)
松下 雅樹 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (60721115)
細野 祥之 愛知県がんセンター(研究所), がん標的治療TR分野, ユニット長 (60820363)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軟骨無形成症 / FGFR3 / 塩酸メクリジン |
研究実績の概要 |
①cell freeキナーゼアッセイでFGFR3下流のMAPK pathwayにおけるリン酸化を検討したところ、メクリジンはMAP3K3のリン酸化を抑制した。さらに詳細にメクリジンの細胞内でのFGFR3抑制作用機序を解明するために、胎生期マウスの長管骨軟骨をFGF添加下に器官培養し、そこからRNAを抽出ののちRNA-seqによりMAPK pathwayに属する遺伝子を解析した。Gene set enrichment analysisにより、メクリジンはMAPK pathwayのうちERKとp38を抑制したが、JNKには影響しないことが明らかとなった。したがって、メクリジンのターゲットはMAP3K以上のレベルであることが考えられ、今後、構造解析などでメクリジンのbinding siteの同定、解明を目指す。 ②7日齢の軟骨無形成症モデルマウスにメクリジンを各種濃度(1, 2, 4, 8mg/kg/day)で10日間連続投与し、骨伸長を検討した。8mg/kg/day投与では毒性のためか、モデルマウスの骨伸長は阻害されたが、その他の濃度では骨伸長は促進し、2mg/kg/day投与で最もその効果が顕著であったので、これを至適濃度と決定した。低リン血症性くる病モデルマウスではFGFR3を含めたFGFRシグナルが亢進していることが知られているため、至適濃度(2mg/kg/day)のメクリジンを同モデルマウスに同じプロトコールで投与した。骨伸長の有意な促進は認められなかったが、メクリジンは成長軟骨板における骨石灰化を促進し、肥大軟骨細胞層の幅を減少させ、モデルマウスの表現型を軽減した。 ③ゼブラフィッシュにFGF2とともにメクリジンを投与した。ゼブラフィッシュの脊椎はFGF2によって石灰化が亢進したが、メクリジンはこれを抑制した。同様の効果は、頭蓋顔面骨でも認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メクリジンのFGFR3抑制作用の検討では、ERKとp38を抑制するがJNKには影響しないことを明らかとし、今後の研究ターゲットをMAP3K3に絞ることができた。in vivoの研究では、軟骨無形成症モデルマウスの骨伸長を促進させるメクリジンの至適濃度を決定し、同様にFGFR3が活性化している別のモデルマウスの表現型も改善しうることを示した。ゼブラフィッシュを用いた研究では、脊椎や頭蓋・顔面骨において、メクリジンがFGF2の石灰化促進作用を抑えることを示し、ゼブラフィッシュモデルの作成に取りかかる準備は整った。
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今後の研究の推進方策 |
①メクリジンーMAP3K3複合体構造を作成し、ドッキングシミュレーションにてメクリジンのbinding siteを同定する。あるいは、MAP3K3の全長または部分的なコンストラクトを作成し、メクリジンとの共結晶を検討する。 ②モデルマウスへの至適用量(2mg/kg/day)と副作用発現量との関連(安全域の決定)について、引き続きメクリジンの投与実験により検討する。 ③ヒトにおけるACHのcommon mutation(G380R)を有するヒトFGFR3 (FGFR3G380R)をゼブラフィッシュのfgfr3あるいはcol2a1aプロモータ下で発現させるコンストラクトを用いて作成する(ACH遺伝子改変ゼブラフィッシュ)。ゼブラフィッシュモデルを用いることにより、頭蓋底の軟骨結合早期癒合とそれに起因する大後頭孔狭窄など、ACHモデルマウスでは評価がやや困難であった初期の異常が明らかとなる。
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