研究課題/領域番号 |
21H03066
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
井上 貴博 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80511881)
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研究分担者 |
田中 利男 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携講座大学教員 (00135443)
佐々木 豪 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20644941)
内田 克典 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (60362349)
加藤 学 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (60626117)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膀胱がん / ゼブラフィッシュ / 薬剤効果判定 / 異種移植モデル |
研究実績の概要 |
Cisplatin/gemcitabineに感受性のあった膀胱がん細胞株UMUC3を用いて赤色蛍光タンパク安定発現細胞株を樹立した(UMUC3DsRed)。UMUC3DsRedを用いてゼブラフィッシュへの最適移植部位を探索したところ、卵黄嚢ではなくduct of Cuvierがもっともがん細胞が安定して生着した。さらにUMUC3DsRedをDiDで2重標識した細胞をゼブラフィッシュに移植し、細胞数・DsRedの蛍光範囲・DiDの蛍光範囲の相関性を評価して、DiDのみでも細胞数を間接的に評価しうることを確認した。この結果、今後ヒト膀胱がん組織から細胞を採取して、ゼブラフィッシュに移植するときにはDiDによる標識で、細胞数の評価が可能である基礎的なデータを得た。 ゼブラフィッシュの自然免疫が移植がん細胞の増殖を抑制するため、膀胱がん細胞株を単に移植するだけでは増殖が困難であったので、マクロファージを消失させる効果のあるLiposome-Clodronateをゼブラフィッシュ飼育槽に添加することが必要なことが分かった。 以上の基礎的なデータをもとにUMUC3DsRedをゼブラフィッシュに移植し、様々なcisplatin濃度でがん細胞を処理したところ、in vitroの結果とin vivoの結果が相関している結果を得たので、今後上記の方法で他のがん細胞の薬剤への反応性をみることが可能となった。 UMUC3をcisplatinおよびgemcitabineに長期暴露して、その耐性株(UMUC3CDDP、UMUC3GEM)を樹立した。また経尿道的膀胱腫瘍切除術から得られた膀胱がん患者組織を免疫不全マウスの皮下に移植して継代可能なmPDXモデル(MieUC1、MieUC2)を樹立した。これらの細胞株を用いてzPDXの系のさらなる確立を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュへの膀胱がん細胞異種移植モデルの基礎的な系が確立できた。この基礎的な系の確立がもっとも重要で、当初は試行錯誤でがん細胞の生着に苦労したが、ようやく薬効を評価しうる段階まで到達した。従って、当初の予定通りの進捗と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
UMUC3をcisplatinおよびgemcitabineに長期暴露して、その耐性株(UMUC3CDDP、UMUC3GEM)を樹立した。また経尿道的膀胱腫瘍切除術から得られた膀胱がん患者組織を免疫不全マウスの皮下に移植して継代可能なmPDXモデル(MieUC1、MieUC2)を樹立した。これらの細胞株を用いてzPDXを用いた抗がん剤耐性も確認していく予定である。また、mPDXとzPDXでの膀胱がん細胞の遺伝子発現の差異をRNA-Seqで検討し、mPDXとzPDXの違いがあるのか、または同じような遺伝子発現をしているのかを確認してzPDXのmPDXに対する有用性を確認していく。 さらには、浸潤性膀胱がん症例の術前化学療法前の経尿道的切除術組織(1)を直接ゼブラフィッシュに移植してcisplatinおよびgemcitabineまたはその混合投与に対したとのきzPDXの反応性と実臨床の膀胱全摘前化学療法による評価を膀胱全摘除術標本(2)の病理所見で比較検討する。(#) (5例目標) また(1)と(2)の組織およびzPDXの抗がん剤投与後の組織のRNA-Seqによる遺伝子発現解析を行い、(#)の妥当性を遺伝子発現レベルで検討する。
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