研究課題/領域番号 |
21H03069
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岩見 大基 自治医科大学, 医学部, 教授 (80581115)
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研究分担者 |
西田 翔 自治医科大学, 医学部, 助教 (00909799)
佐久間 康成 自治医科大学, 医学部, 教授 (10296105)
上田 祐司 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10364556)
南園 京子 自治医科大学, 医学部, 助教 (10885586)
相澤 健一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70436484)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腎移植 / タクロリムス / メタボローム |
研究実績の概要 |
【臨床腎生検検体での検討】 当院において腎移植後に移植腎生検を行ったサンプル94検体について、タクロリムス(TAC)慢性腎症(Banff分類aahスコア)について、TAC投与状況(ドナー腎提供時年齢、TAC投与年数、TAC血中濃度)との関係を多変量解析にて解析した。その結果、ドナー年齢、TAC血中濃度(トラフ値)、TAC24時間血中濃度曲線下面積(AUC)はaahと明らかな関係は認められず、TAC内服期間(=移植後年数)が有意に関係していた。また、腎組織内のTAC濃度についてはTAC血中濃度に並行して推移することが確認されたが、組織内濃度もまたTAC腎症発症に明らかな影響は認めなかった。したがって、腎移植臨床で使用される血中濃度においてはTAC血中・組織中濃度ではなく慢性的な暴露がTAC腎症発症に影響を与えていることが強く示唆された。 【動物モデルでの検討】 7週齢マウスに0.01%低Na食を経口摂取させながら1mg/kg/dayのTACを28日間皮下投与した。全身麻酔下に腎組織を採取し、病理学的な評価を行った。その結果、TAC投与群は対照群と比べて明らかに線維化領域が増加しており、TACによる慢性障害が生じていることが確認された。また、同様の処置を行った腎組織をキャピラリー電気泳動(CE)とフーリエ変換型質量分析計(FTMS)を組み合わせたCE-FTMSシステムにより腎組織の代謝物解析を行った。代謝物は545種の代謝物(カチオン305種、アニオン240種)が検出された。対照群と比較し61種類の代謝物にて有意差が見られた。そのうち、ミトコンドリアに関連する代謝物がTAC投与群で有意に低下しており、とくにミトコンドリアでのカルニチン代謝障害が示唆される結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【臨床腎生検検体での検討】 臨床腎移植サンプルを用いた検討は上記のとおり順調に進行している。 【動物モデルでの検討】 マウスにおけるTAC腎障害モデルを用いたメタボローム解析は上記のどこくミトコンドリアに対する障害が見出された。 加えて、質量分析イメージング法(Mass Spectrometry Imaging : MSI)によるTACおよびその代謝産物の腎組織内分布動態は現在進行中でほぼデータは出揃っており、TAC分布動態とミトコンドリア障害の関連について、データを融合させて解析することが可能な状態になりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
①患者サンプルを用いた薬物動態解析 前年度までの研究結果を受けてTACとその代謝物の移植腎組織内濃度分布特性が腎症発症に密接に関連しているという仮説の実証のため、まず、(1)TAC(未変化体および代謝物の)腎組織濃度とその分布特性と腎生検病理におけるTAC腎症との関連を明らかにしてゆく予定である。 ②動物モデルを用いた薬物動態解析 マウスおよびラットTAC腎毒性モデルを用いて腎組織TAC濃度と腎症の関係解析をさらに進める。前年度までに行ったメタボローム解析から、ミトコンドリアにおいて障害されている代謝経路にTACが及ぼす影響を詳細に解析する。また、薬物分布イメージング解析を行い、TACの分布特性と、とくに障害を受けている微小領域を特定する。臨床検体での解析結果と総合し、TAC腎症に対する新たな治療標的の提案につなげてゆく予定である。
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