研究課題
【臨床腎生検検体での検討】当院において腎移植後に移植腎生検を行ったサンプル94検体について、タクロリムス(TAC)慢性腎症(Banff分類aahスコア)について、TAC投与状況(ドナー腎提供時年齢、TAC投与年数、TAC血中濃度)との関係を多変量解析にて解析した。その結果、ドナー年齢、TAC血中濃度(トラフ値)、TAC24時間血中濃度曲線下面積(AUC)のいずれもaahスコアと有意な関係を認めず、TAC投与年数(=移植後年数)が有意に関係していた。また、腎組織内のTAC濃度についてはTAC血中濃度に並行して推移することが確認されたが、組織内濃度もまたTAC腎症発症に明らかな影響は認めなかった。したがって、腎移植臨床で使用される投与量においてはTAC血中・組織中濃度ではなく慢性的な暴露期間がTAC腎症発症に影響を与えていることが強く示唆された。【動物モデルでの検討】7週齢マウスに0.01%低Na食を経口摂取させながら1mg/kg/dayのTACを28日間皮下投与し、腎組織の病理学的な評価を行った。その結果、TAC投与群は対照群と比べて明らかに線維化領域が増加しており、TAC腎症が確認された。また、その腎組織をキャピラリー電気泳動(CE)とフーリエ変換型質量分析計(FTMS)を組み合わせたCE-FTMSシステムにより腎組織の代謝物解析を行った。代謝物は545種の代謝物(カチオン305種、アニオン240種)が検出された。対照群と比較し61種類の代謝物にて有意差が見られた。そのうち、ミトコンドリアに関連する代謝物がTAC投与群で有意に低下していた。とくにミトコンドリア機能維持に重要なカルニチンおよびその関連代謝物が有意に低下していることが判明した。以上よりTAC腎症発症機序として、TAC慢性投与によるカルニチン代謝異常を介したミトコンドリア機能低下が関与していることが示された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Biomedicines
巻: 12 ページ: 521~521
10.3390/biomedicines12030521