研究実績の概要 |
正常子宮内膜に存在する癌遺伝子変異の生物学的な意義を明らかにするために、良性疾患で摘出した子宮から正常子宮内膜を採取し、内膜を9領域に分け、各領域別にコラゲナーゼ処理により間質細胞を除去した上で、個々の単一腺管をmicroscopic manipurationで単離した。単離した単一腺管をサンガーシーケンスにより癌遺伝子の変異を解析した。また単一腺管をspheroid培養に供し、径2mm以上に成育したspheroidを回収して癌遺伝子変異を解析した。サンガーシーケンスでは腺管270のうち、25個(9.3%)にPIK3CAまたはKRAS遺伝子変異を認めた。 領域別では、特定の領域への集積の傾向が認められた。droplet-PCR解析ではKRAS遺伝子変異のMAFは1.1%であったのに対し、PIK3CAでは16.4%とclonalな存在様式を認めた。33個のspheroidの解析では、22個に変異を認め、認められた遺伝子変異の全てはPIK3CAであった。spheroidの免疫染色ではALDH1A1, Axin2, SOX9 などのstem cell markerが全て陽性であった。以上の結果から、PIK3CAがspheroid形成に重要な役割を担っていることが明らかとなった。spheroidはstem-richな集団と考えられるため、正常内膜では、内膜stem cellへのPIK3CA遺伝子変異が一定の頻度で入っている可能性が示唆され、閉経期までに渡り旺盛な再生増殖を示す内膜のbiologyや癌化過程の一翼を担っている可能性がある。
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