研究課題
卵巣がんの一組織型である明細胞がんは、本邦における高い頻度、早期発見の困難さ、高い治療抵抗性を示し予後不良である事より、その抵抗性解明は医療上の喫緊の課題である。本研究では細胞間の相互依存的なネットワークの形成が抗がん剤抵抗性の本態であると考え、1細胞核解析と各種空間的解析を組み合わせてその本態解明を行っている。これまでの研究で、1細胞核解析により抵抗性症例においてのみ増加するHIF-1陽性がん細胞群を治療抵抗性細胞群として同定した。さらに抵抗性細胞群に特異的に発現する抵抗性シグネチャーを空間的トランスクリプトームに投影する事により、HIF-1陽性抵抗性細胞はCancer-associated fibroblast (CAF)の存在領域と一致しており、抵抗性細胞とCAFが共局在する事を明らかにしている。最終年度は、多数の臨床検体標本(n=86)の免疫染色解析を行い、明細胞がんにおけるこれらの細胞の増加と予後不良が相関する事を明らかにした。さらに、臨床検体由来の明細胞がんスフェロイドとCAFの共培養系を確立し、がん由来のPDGFがCAFを活性化し、活性化CAFの存在下でがん細胞のHIF-1活性の誘導、および抗がん剤抵抗性の亢進が引き起こされる事を示した。これらの結果より、卵巣明細胞がんの抗がん剤抵抗性領域では、HIF-1陽性がん細胞とCAFが相互作用により活性化しており、これらのフィードバック制御は治療標的となりうると考えられた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Communications Biol.
巻: - ページ: -
10.1038/s42003-023-05550-2
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