研究実績の概要 |
鼻性NK/T細胞リンパ腫はアジア圏を中心に発症する悪性疾患であり、申請者が腫瘍細胞へのEBウイルス(EBV)感染を世界に先駆けて報告(Harabuchi et al. Lancet, 1990)して以降、EBV関連悪性腫瘍のひとつとして確立されている。これまで、申請者らは本疾患に発現している遺伝子を網羅的に解析するとともに、EBVが悪性化に関わるメカニズム解析や疾患特異的な腫瘍増殖因子の検索、腫瘍周囲に浸潤している炎症細胞とのクロストークの解明、細胞株を免疫不全マウスに移植した異種移植モデルの作成と薬効評価系の確立などを行い、その成果を国内外に報告してきた。さらに、近年多くの腫瘍で着目されている免疫チェックポイント分子の発現を解析することで、本疾患における免疫治療の実現性についても検討を重ねてきた。本研究ではこれまでの研究をさらに発展させ、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬、化学療法が腫瘍の免疫原性に及ぼす効果を明らかにするとともに、新規免疫療法の標的となる腫瘍抗原関連エピトープの同定を試みる。さらに、腫瘍抗原から同定、作成したエピトープペプチドを用いてペプチドワクチンおよび分子標的薬などによる免疫賦活化療法の有効性をマウスモデルで明らかにする。本研究の成果により、予後不良な鼻性NK/T細胞リンパ腫を治癒に導ける複合的免疫療法の基盤が確立した。
|