研究課題/領域番号 |
21H03084
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
堀井 新 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30294060)
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研究分担者 |
五十嵐 博中 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20231128)
和田森 直 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (60303179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | めまい / 検査 / 視覚 / 体性感覚 / 前庭 |
研究実績の概要 |
持続性知覚性姿勢誘発めまい (PPPD) は、慢性めまいの約40% を占め、体動や視覚刺激で誘発されたのち長期持続するという特徴を持つ。症候学的な診断基準は策定されたものの病態は未解明であり、特異的な検査所見、真に有用な治療法の報告はない。本研究では脳機能画像研究者や工学部の技術開発者と協働し、functional MRI (fMRI)、動的体平衡測定装置、視覚刺激下重心動揺検査、頸部傾斜負荷自覚的垂直位検査、3D立体音響を用いた感覚代行装置を新規に開発あるいは臨床応用し、PPPDの病態を解明したうえで、これまで不十分であった診断に有用な特異的検査と病態に基づいた新規治療法を提案する。これにより、これまで診断のつかなかっためまい症や治療抵抗性の慢性めまい疾患とPPPDの関係を明らかとし、難治性慢性めまい疾患の新たな治療への道を切り開く。現時点で、PPPD診断に有用な問診票(Niigata PPPD Questionnaire, NPQ)の開発とvalidation、PPPD診断に特異的な検査法(頭部傾斜負荷自覚的視性垂直位検査)を開発し、結果を英文論文として報告した。また、PPPDには、視覚誘発優位型、能動運動誘発優位型、混合型の3つのサブタイプが存在し、サブタイプごとに治療法をオーダーメード化できる可能性を英文原著で報告した。薬物治療として、SSRI/SNRI/NaSSaが長期的に有効であることを和文論文として報告した。論文化は未だであるが、視覚刺激を与えたのちにPPPD患者では固視機能が低下すること、視覚刺激中の重心動揺が増大することを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検査、治療に大きく分けた場合、検査に関しては予想以上の進展を見せている半面、治療に関しては予定通りであり、当初計画以上の進展とまではいかない状況である
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今後の研究の推進方策 |
今後は特に新規治療に注力した研究を行う。 3D音響式感覚代行システムの開発: 感覚代行とは障害を受けた感覚系の機能を補うために別の感覚で代行させる方法で、前庭覚では両側前庭機能廃絶症例に試みられている。下顎部への触覚刺激で代行するシステム では、健常者に感覚代行訓練を行うと、重心動揺の視覚依存度・体性感覚依存度が低下する。すなわち、前庭覚、視覚、体性感覚に次ぐ第4の新たな平衡を司る感覚系を導入すると、体平衡維持のストラテジーのバランスが再構築され、視覚や体性感覚への重みづけが減少することを示す。体平衡維持の可塑性低下が原因と考えられるPPPDでは、感覚代行訓練により可塑性を再誘導し、視覚依存・体性感覚依存が減弱することで視覚刺激や体動によるめまいの増悪・誘発が軽減される可能性が考えられる。本研究ではジャイロセンサーから得られた身体の傾斜情報を3D音響刺激に変換し、平衡に関与する第4の感覚系として導入する。右への傾きを頭部に取り付けたジャイロセンサーが感知すると、ヘッドフォンを通して3D音響が右から聞こえる。この3D音響の音信号が新たな経路で平衡中枢へと伝わる。装着者は、音の方向と強さから身体の傾く方向と程度を感知し、身体の傾きが修正されると3D音響刺激が停止する。まず健常者において武田 (2020年) の報告した感覚代行訓練の重心動揺への影響を追試し、次いでPPPD患者に感覚代行訓練を行いその前後で、 重心動揺のラバーロンベルグ率 (視覚依存度)、閉眼ラバー比 (体性感覚依存度)、めまいの自覚症状 (DHIおよびNiigata PPPD Questionnaire)、視覚刺激下重心動揺検査、動的体平衡機能検査、傾斜負荷SVVを比較する。また、感覚代行訓練前後のfMRIを比較し、その作用部位を検討する。
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