研究課題
本研究では、独自開発の改変型AAVベクターとiPS由来疾患モデル細胞(特許出願済)を用いた遺伝性難聴への内耳AAVゲノム編集技治療法の開発研究である。標的とするのは遺伝性難聴最大の原因遺伝子GJB2(コネキシン26)の遺伝子変異であり、変異ゲノムの修復による根本的治療法を開発する。本研究の特色は蝸牛上皮全般への遺伝子導入が可能な独自開発の新型ベクターを用い、日本人の典型的GJB2変異を持つ患者iPS由来モデル細胞および対応するCX26変異モデルマウス(GJB2-KO, GJB2-R75W-Tg, GJB2-KI)へのゲノム編集により遺伝子修復を行う内耳AAVゲノム編集治療の確立を目指す。本年度はこれまで確立した分化誘導法の改良によりiPS細胞からCX26およびCX30によるギャップ結合を形成する内耳細胞シートを開発し(Human Molecular Genetics, 2021)、更なる条件検討によりギャップ結合複合体を形成する高分化型の細胞シートを作製した。また、マウス内耳ゲノム編集用AAVベクターの作製を行い、蝸牛上皮全般に遺伝子導入が可能な内耳細胞用カプシド改変型AAVベクターを特許出願した(特願2021-198101)。同ベクターによりCRISPR/Cas技術でのゲノム編集用ベクターの設計を行った。これまでにガイド(g)RNA、Cas9 (CRISPR associated protein 9)、変異修復用ドナーDNA (ssODN: single-strand oligo deoxy nucleaotides)によるゲノム編集ツールおよびABE(Adenine Base Editor)を用いたゲノム編集ツールを各々設計し、独自開発のAAVに搭載した遺伝子導入用ベクターを作製した。これらをマウス内耳へ遺伝子導入するための投与法の技術開発を行った。
2: おおむね順調に進展している
カプシド改変型AAVの特許出願が完了したため、これを用いたゲノム編集ツールを搭載したベクター作成に移行することができた。iPS由来モデル細胞の開発も一部を論文発表したことにより順調に進んでいる。マウス内耳への投与法検討もモデルマウスの繁殖が正常化に向かっているため、順調に進んでいる。。
今後はモデルマウスの開発状況に応じて聴力改善を目指したゲノム編集技術の開発を目指す。独自開発したAAVベクターを用いた最適なゲノム編集ツールを選抜し、これによる変異ゲノムの修復によりこれまで皆無であった遺伝性難聴のゲノム編集治療の実用化を目指す。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Human Molecular Genetics
巻: 30 ページ: 1429-1442
10.1093/hmg/ddab097
Frontiers in Cell and Developmental Biology
巻: 21 ページ: 1-12
10.3389/fcell.2021.602197
Stem Cell Research
巻: 53 ページ: 1-5
10.1016/j.scr.2021.102290