研究課題
動物実験においては、アルツハイマー病(AD)モデルマウスと野生型の2遺伝型マウスに対して、嗅球除去による認知行動、不安様行動への影響の観察を行った。嗅球除去により嗅覚機能が喪失したことは、キツネ尿抽出物の派生化合物である2MTを使い、高架十字迷路様の長方形のオープンフィールドを使ってマウス行動を解析したところ、除嗅球による忌避行動の減弱が観察できた。モリス水迷路試験と新規物体識別試験により認知機能を観察したところ、嗅球除去により野生型マウスでは認知機能の低下が見られたが、ADモデルマウスでは、嗅球除去群と模擬手術群との間に有意な認知機能の差を認めなかった。ADモデルマウスでは元々、認知機能が低下しているため差が出なかったものと思われる。また、ADモデルおよび野生型マウスにおいて嗅球除去を施すことによって、不安様行動が出現し、その再現性も確認できた。人を用いた研究では、嗅覚外来を受診する嗅覚障害患者のうち、高齢者で原因不明の嗅覚障害患者に対して嗅覚検査とともに、MRIによる嗅内野、海馬、扁桃体の萎縮の有無を、アルツハイマー病早期診断用解析ソフトVSRADを用いて測定するとともに、嗅球の体積も測定した。VSRADで関心領域の萎縮を示す例では、認知症センターに受診していただき、認知機能の測定ならびに診察を受けていただいた。その結果、嗅覚障害患者のうち、少数ではあるが関心領域の萎縮を認める症例が存在し、その一部に認知症を疑う症例が存在することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
動物実験は当初の予定通り順調に進行している。人に対する研究は、アルツハイマー病患者に対する研究がまだ十分に行われておらず、今後進展を図りたい。
動物実験については、行動実験の簡便化と精度の向上を図りたい。また、扁桃体、海馬等の組織学的検討により、アミロイド沈着などADに特異的な変化の観察を行い、嗅球除去による同部への影響を観察する。人を用いた研究では、AD患者、MCI患者を対象として同様の研究を行うとともに、既にデータが得られている嗅覚障害患者のその後の変化を確認する。また、嗅覚刺激による嗅覚機能、認知機能の変化も観察する。さらに新たに購入した新規におい提示装置を用いて高齢者の嗅覚機能測定を行う。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
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