研究課題/領域番号 |
21H03095
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂本 泰二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10235179)
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研究分担者 |
原 博満 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20392079)
寺崎 寛人 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (20746888)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工知能 / 光干渉断層計 / 脈絡膜 / 加齢黄斑変性 / 性別判定 / エントロピー |
研究実績の概要 |
硝子体学の研究を継続した。特に人間の眼を研究するために、硝子体サンプルの採集を継続した。これまでのサンプルから、VEGF165とVEGF121を区別して定量する試みを始めた。これは世界初のシステムであり、今年論文報告した(Yamakuchi M, Sakamoto T et al.PlosONE 2023)。一方、画像解析や人工知能研究は大幅に進歩した。硝子体、網膜、脈絡膜の画像について診断するための人工知能の開発は、各国で進んでいるが、具体的にどの部分に問題があるかという点については研究が進んでいなかった。そこで光干渉断層計(OCT)の層別化解析アルゴリズムで計算されるエントロピーが大きい点を正常、小さい点を異常として、heat mapを各層で作成することで構造上の異常点を指摘するソフトウェアを開発した。(Shiihara H, Sakamoto T et al. PlosONE 2023)これは日本企業Nidek社の時期OCT機種に搭載される。 脈絡膜構造の解析については、OCT画像解析の歪みについて、補正するアルゴリズムを開発して、正常人のVortex veinの場所と数について定量的解析を行い、性別、眼軸長などについて大きなバリエーションがあることを報告した(Funatsu R, Sakamoto T etal. Ophthalmol Sci in press)。 一方、人工知能の診断について、deep learningを用いた場合その過程が明らかでなかったことはblack box人工知能として問題になっているがその問題解決のため、久米島で行われた住民の眼底画像と、鹿児島大学付属中学校で定期的に撮影された画像を組み合わせた解析を行い、大きな成果を得ている。これは人工知能が見出したテーマについて、人間が探求するという21世紀的な研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液、硝子体におけるVEGFサブタイプの研究:健康人の調査で、VEGF-A121レベルがVEGF-A165よりも高く、血清中のレベルが血漿よりも高いことが明らかになった。VEGF-A165は、血小板中でより高いレベルを示した。 (Yamakuchi M,Sakamoto T et al. PlosONE 2023)。 Wayfinding 人工知能解析:この研究では、あいまいさ指数を使用してOCT画像を分類することができることが示された。疾患画像では正常画像よりもあいまいさ指数が高く、内境界膜境界に比べ神経線維層/神経節細胞層境界、内網状層/内核層の方が区別がしやすかった。あいまい性マップは、網膜病変の局在を正確に示すことができ、臨床医の診断を補助する道案内ツールとして役立つことが示唆された。(Shiihara H, Sakamoto T et al. PlosONE 2023) (Funatsu R, Sakamoto T et al.Ophthalmol Sci in press)。 Black box人工知能の解明: 研究目的は、高齢者のカラー眼底写真から性別を判断するために、回帰分析を使用することであった。研究者は、1653人の健常者の写真を収集し、42のパラメータを分析した。L2正則化二項ロジスティック回帰を使用して、性別を予測し、評価した。結果として、回帰分析により、高齢者のカラー眼底写真から性別を決定することができることが示された。また、卵円率、網膜血管の角度、テッセレーション、および眼底の緑色の強度は、40歳以上の個人の性別を識別するための重要な要素であることが示唆された。(Yamashita T , Sakamoto T et la.Graefes 20223)。
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今後の研究の推進方策 |
VEGFのアイソフォーム研究においては、今まで蓄積していたサンプルを大幅に解析することで、新たな発見が得られた。予備実験において、afliberceptを投与した硝子体とranibizumabを投与した硝子体において、完全にアイソフォームの構成が変化していたことが分かった。この発見は非常に重要であり、特許などの関係でまだ報告できない状況にあるが、今後の研究につながることは間違いない。 また、画像解析の研究についても、pachychoroidやcentral serous retinopathyの症例データが集積され、それぞれの予後予測因子に、開発したアルゴリズムがどの程度役に立つかを検討する。予備研究においては、網膜の特定の層までの厚さが視力予後と強く相関することが明らかになっており、これは今後の研究の方向性につながる成果と考えられる。 さらに、人工知能の思考過程を解明する研究においては、鹿児島大学眼科学教室がプールしていた小児や生徒のデータを、それぞれの個人の成長過程に注視しながら時系列を追ってバイオマーカーを解析することが計画されています。しかし、正常人の血液データの収集には限界があるため、それをどのようにするかが検討課題である。それでも、この研究は人工知能の思考過程に迫る可能性があるため、非常に興味深いものとなっている。
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