放射線照射は、年間30万人にも及ぶ放射線治療をはじめとする医学的利用をはじめ、農業や工業など、社会で広く有効利用されている。しかし、放射線治療に伴う放射線障害、大量被ばく事故や処理水放出など、負の側面が懸念されている。放射線治療は、治療法が洗練されて、急性障害はあまり見られなくなってきた。しかし、晩期障害はこれまで過小評価されており、数年後に治癒不良など外科的な問題や、拘縮や痛みなど生活上の問題が顕在化してきて、患者を苦しめることになる。本研究では、これまで積み重ねてきた予備研究の成果に基づき、放射線照射に伴う負の側面を完全に払拭することが目的である。そのために、確定的慢性放射線障害(=晩期障害)の実態解明、晩期障害の治療法の開発、予防法の開発、分割照射プロトコールの最適化、予防と組み合わせたさらなる積極的放射線利用の追求、を実現する。臨床研究を含む多角的なアプローチを用いて、放射線利用にパラダイムシフトをもたらし、さらなる有効発展利用を追求する研究計画である。放射線照射により幹細胞が細胞サイクルに依存してダメージを受ける。増殖期似ない場合は、40Gyの単会照射でも傷害をうけない。放射線照射後の組織の晩期障害は、12か月に至るまでは、進行性で増悪し、虚血、線維化、皮下脂肪の萎縮、創傷治癒遅延などが誘導される。ヒト培養脂肪幹細胞、マウスを使用した実験で明らかにしてきた。また、放射線照射の急性障害に対する幹細胞治療、晩期障害に対する幹細胞治療、晩期障害の発生を予防するための幹細胞治療、などの有効性を明らかにし、予防治療では、局所投与だけでなく、全身投与によっても治療効果を認めることを示すことができた。
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