研究課題
本年度において、申請者は骨膜幹細胞を特異的に欠損するユニークなマウスモデルを樹立し、当該マウスでは膜性骨化のみならず内軟骨性骨化も著しく障害されることを見出した。そこで骨膜幹細胞が可溶型因子を産生することで内軟骨性骨化を制御するという仮説を立て、骨膜幹細胞に高発現する可溶型因子を探索し、Ihhを同定した。Ihhのコンディショナルノックアウトマウスの表現型解析から、骨膜幹細胞の産生するIhhは成長版軟骨に存在する骨格幹細胞に作用しており、生後の骨形成において解剖学的局在の異なる幹細胞同士のクロストークが重要であることを見出した(Tsukasaki et al., Nature Communications 2022)。また申請者は近年、破骨細胞分化誘導系の時系列に沿ってsingle cell RNA-seq (scRNA-seq) を行い、機械学習アルゴリズムを用いた擬似時間(pseudotime)解析を行うことで、破骨細胞分化は多段階の分化ステップに分類でき、各ステージで分化経過が遺伝子レベルで精密に制御を受けていることを見出した(Tsukasaki et al., Nature Metabolism 2020)。シングルセル解析のデータから、破骨細胞分化ステージそれぞれに重要と考えられる新規遺伝子候補のリストを作成し、特に分化の最終段階で発現が上昇する機能未知・未命名の新規遺伝子を同定した。当該因子のコンディショナル欠損マウスでは破骨細胞分化が著しく障害されており、破骨細胞の最終分化に必須の新たな遺伝子を同定した。
2: おおむね順調に進展している
骨膜幹細胞による骨恒常性維持機構を発見し、論文として報告した(Tsukasaki et al., Nature Commun 2022)。また、破骨細胞の新規制御因子として機能未知・未命名の新規遺伝子を同定し、当該因子のコンディショナル欠損マウスでは破骨細胞分化が著しく障害されることを見出している。
申請者は、骨膜幹細胞が生理的骨代謝の維持に重要な役割を担うことを同定した。そこで今後は、様々な病的状態における骨膜の新機能の探索を進める。また、申請者が破骨細胞のシーケンスデータから新規に見出した機能未知・未命名遺伝子の機能解明を行う。以上より、骨代謝細胞の機能的多様性を生体レベルで解明し、骨組織の発生・維持・破壊を担う細胞分子メカニズムをこれまでにない解像度で捉えることを目指す。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (24件) (うち招待講演 24件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Inflammation and Regeneration
巻: 42 ページ: -
10.1186/s41232-022-00213-x
Nature Immunology
巻: 23 ページ: 1330~1341
10.1038/s41590-022-01285-0
Nature Communications
巻: 13 ページ: -
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