研究課題/領域番号 |
21H03109
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
照沼 美穂 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50615739)
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研究分担者 |
多部田 康一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20401763)
飯田 和泉 (渡辺和泉) 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80751031)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯周病 / Pg菌 / 精神疾患 |
研究実績の概要 |
歯周病は口腔内感染症の一つであり、グラム陰性嫌気性菌であるPorphyromonas gingivalis菌(Pg菌)を含むいくつかの口腔内細菌が炎症を惹起することで発症すると考えられている。アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、うつ病などの精神・神経疾患は、脳の炎症所見である神経炎症が認められる疾患であり、感染症の1つである歯周病との関連性が報告されてきた。しかし、歯周病原細菌感染による脳疾患発症の病態生理学的な分子機序の解明は十分になされていない。最近、AD患者の脳からPg菌の16s rRNAやPg菌産生タンパク質分解酵素ジンジパインが検出された (Dominy et al, Science Advances, 2019)。口腔内細菌は、歯科治療や歯磨きなどでも血液中に侵入し、菌血症を発症させることから、本研究では、「血管内に侵入したPg菌は脳に作用する」との仮説を立て、検証を行うこととした。中でも、精神疾患との関連性を明らかにするために、ストレス反応の中枢であり、摂食行動や睡眠、性行動などの本能行動を司る視床下部に着目し研究を行う予定である。 本年度は、尾静脈に投与したPg菌の追跡を行うために、細菌の生存時間について、経時的に解析をした。また、Pg菌の投与回数による脳の炎症反応の変化を、様々な部位において解析した。同時に、食欲や体重の変化の有無、基本的な行動解析を行い、マウスの健康状態を確認した。 これらの研究により、Pg菌がどのような脳部位で著明な炎症反応を起こすかが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題1、研究課題2に記載していた、当初より予定していた研究に着手することができたため、順調に進展していると考える。それぞれの実験で順調に成果も出てきている。初年度の研究成果は、学会等での発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ストレスとの関係を明らかにするために、ストレスに着目した研究を行う。具体的には下記の3つの研究を行う。 (1)ストレス評価を行う:視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)の機能を解析するため、視床下部から放出される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、下垂体から放出される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、そして副腎皮質から放出されるグルココルチコイドの血中濃度をそれぞれ測定する。 (2)ストレスに関係する行動解析を行う:うつ様行動評価に用いられる強制水泳試験、学習記憶試験、自発運動活性測定、尾懸垂試験、ショ糖優先試験を行い、精神状態を評価する。 (3)全身および脳の炎症の評価:サイトカインの測定や、脳以外の各種臓器における炎症の有無を、組織学的に解析する。
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