研究課題
臼歯部咬合支持状態は、咀嚼能力の低下に関わっていることがこれまでに報告されている。しかし、臼歯部咬合支持の喪失が、どの程度咀嚼能力の低下に関わるかは明らかではない。そこで、本研究では、地域在住高齢者を対象に6年間の縦断研究を行い、臼歯部咬合支持状態の変化と咀嚼能力の関連を検討した。対象者は、2013年度のSONIC研究に参加した72-74歳の自立した地域在住高齢者864名とした。そのうち、6年後の追跡調査に参加し、かつ評価項目のデータがすべて揃っているもの488名(男性:246名、女性:242名)を最終的な解析の対象とした。口腔内検査により、残存歯数、欠損放置歯数、咬合支持状態、可撤性義歯の使用の有無を記録した。6年間での咬合支持状態の変化は、アイヒナー分類を用いて評価した。また、デンタルプレスケールを用いて最大咬合力を測定し、咀嚼能率検査用グミゼリーを用いてスコア法により咀嚼能力を評価した。 統計学的分析には、咀嚼能力と咬合支持状態の変化との関連を検討するために、目的変数を咀嚼能力とした、マルチレベル解析である線形混合モデルを用いた。さらに6年間での咀嚼能力低下との関連を検討するために、経過年数と咬合支持状態の変化との交互作用項を投入した。有意水準は5%とした。6年間での咬合支持状態の変化は、A→A群が217名、B1-3→B1-3群が101名、B4-C→B4-C群が102名、A→B1-3群が41名、A・B1-3→B4-C群が24名、B1-3→A群が3名であった。咀嚼能力を目的変数とした線形混合モデルの結果、性別、咬合力、欠損放置歯数、経過年数、咬合支持状態の変化は、咀嚼能力に有意な関連を示した。咬合支持状態の変化と経過年数との交互作用項は、咀嚼機能低下に有意な説明変数となった。本研究の結果より、咬合支持状態の変化は、咀嚼能力低下に関連することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
参加者数も予定通りであり、データの整理、分析も順調である。
次年度も、今年度同様、参加者の確保、データ整理、分析を遅滞なく進める。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件)
International Journal of Environmental Research and Public Heatlh
巻: 19 ページ: 10330
10.3390/ijerph191610330
Geriatr Gerontol Int
巻: 22 ページ: 1040~1046
10.1111/ggi.14504