研究課題
本研究では,大人数の地域在住高齢者を対象に,調査から得られた縦断的データを用いて,口腔機能の維持が健康寿命延伸に与える影響を検討することを目的としている.2023年度は,感染対策に十分配慮したうえで,3地域の在住高齢者204名(伊丹地区97名,朝来地区47名,板橋地区60名)に対して会場調査を行った.SONIC研究で昨年度までに調査を終了している70歳から90歳までの各年齢群の計約2600名分のデータに対して,本年度の新たな追跡調査を追加した縦断データベース(2024年3月末時点でデータ整理が終了しているものに限る)を基とした分析結果より,以下の結果が得られた.咬合支持状態の変化と咀嚼能率を調べた線形混合効果モデルによる縦断分析の結果,ベースライン時の臼歯部咬合支持状態ならびにその減少は,6年後の咀嚼能率の悪化に影響することが示された.また,心理的フレイルに対する咀嚼能率の影響を調べた混合効果順序ロジットモデルを用いた6年間の縦断分析では,高い咀嚼能率は,背景因子を調整したうえでも,心理的フレイルの発症を抑制することが明らかとなった.加えて,ベースライン時の歯数と食品摂取状態,ならびに9年間の認知機能との関連を調べた一般化推定方程式による4時点縦断分析の結果,歯数は肉類ならびに緑黄色野菜の摂取量に有意に影響し,それらと認知機能との間に縦断的な関連があることが示された.これらの知見により,歯数や咀嚼能率といった口腔機能の維持は,高齢者の健康寿命延伸に寄与することが示唆された.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Journal of the American Geriatrics Society
巻: 71 ページ: 1819~1828
10.1111/jgs.18239
Journal of Dentistry
巻: 139 ページ: 104763~104763
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