研究課題/領域番号 |
21H03144
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
古株 彰一郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (30448899)
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研究分担者 |
土生 学 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (00360058)
中平 光彦 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10253353)
Addison William 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (40845046)
佐藤 毅 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60406494)
矢田 直美 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (60468022)
細見 周平 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60554938)
永野 健一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (60834348)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 舌がん / 扁平上皮がん / 舌筋 / 舌筋再生 / 炎症 |
研究実績の概要 |
舌がんは粘膜下の筋層に浸潤すると予後が悪い.そのためがん細胞の筋層浸潤の制御は重要な課題であるが,そのメカニズム,特に宿主側の筋と浸潤するがん細胞との関連(がん・骨格筋連関)には不明な点が多い. 筋組織は侵害刺激を受けると筋線維周囲に存在する骨格筋の組織幹細胞であるサテライト細胞が活性化し,すみやかに増殖し始める.十分に増殖した細胞は互いに融合し,多核の筋線維が再生される. 舌がんが粘膜下の舌筋に浸潤する際,がん細胞周囲の筋線維に侵害刺激を与え炎症や再生が誘導される.骨格筋の炎症・再生環境は隣接するがん細胞に対して重大な影響をあたえる可能性がある.しかし,舌がんの他に筋組織直上の粘膜に発生する咽喉頭がん,上部食道がんなど以外では骨格筋にがん細胞が浸潤することは少なく,転移することもほとんどないため骨格筋の再生環境ががん細胞に与える影響を検討した研究はない.さらに,骨格筋種によって発生起源や再生能力,さらには筋ジストロフィーなどに対する疾患感受性などに大きな違いがあることがわかってきている.しかし,骨格筋の炎症や再生の研究は四肢骨格筋を用いたものばかりであり,舌筋の炎症・再生メカニズムはよくわかっていない. そこで申請者らは舌筋再生過程を正確に理解するために,上皮成分を取り除き,舌から純度の高い骨格筋組織を抽出する手法を確立した.さらに,これまでにカルディオトキシンの注射で誘導した舌筋の再生を,これまで多くの研究者によって研究されている前脛骨筋の再生過程と比較検討を行い,舌筋と前脛骨筋では,ホメオボックス遺伝子の発現パターンが大きく異なることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
舌から純度の高い骨格筋組織を抽出する手法を確立することができた.さらに,舌筋の再生過程をこれまで多くの研究者によって研究されている前脛骨筋と比較検討を行い,舌筋に特異的な現象を見出し,その成果を既にImpact factorの高い雑誌に掲載させることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
骨(骨芽細胞・骨細胞)は骨格筋と細胞系譜的に近縁であるにも関わらず,がんが容易に転移することから,骨はがん細胞が好む場として有名である.そこで,“がん”が好む“骨”と好まない“骨格筋”から分泌されるサイトカインを比較すれば,その要因となる候補を見つけることができると考え,骨格筋細胞C2C12と骨芽細胞MC3T3-E1の培養上清をサイトカインアレイで網羅的にスクリーニングした.さらに,文献的検討とデータベース解析を加え,がん細胞が好む環境を作る要因としてFactor Aを,がんの好まざる環境を作る要因としてFactor Bを候補として見出している.今後はIn vivo,In vitroの両方から口腔扁平上皮癌への作用を検討していく.
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